(41)派遣法、どこが問題?〈1〉
雇用責任負うべき派遣先が責任回避
労働者派遣は「間接雇用」という大きな弊害を伴いますので、派遣を利用できる場合を限定して、正社員雇用を原則とする必要があります。1986年7月に労働者派遣法(以下、派遣法)が施行される前は、労働者派遣は違法でした。労働者を職場に受け入れて実際に働かせる会社が、使用者として雇用責任を含む、すべての法的責任を負うことが原則でした。
労働者派遣では派遣元が雇用主とされ、労働者を採用したり、解雇するのは派遣元です。派遣先は、正社員であれば解雇を簡単にできません。合理的で相当な理由が必要とされ、そうした理由がな解雇は無効です(労働契約法16条)。
ところが、派遣労働者であれば、派遣先は派遣元との「労働者派遣契約」を打ち切ることで、「解雇」をせずに労働者の受け入れを止めることができるのです。解雇するのは派遣ければ権利濫用として元の責任とされ、派遣先は「事実上の解雇」を痛みなく行うことになります。実際、派遣会社は、派遣先への売り込みの際に、この点を強調して「派遣であれば、雇用責任を負わずに済む」と宣伝しています。労働者側にすれば、派遣先の勝手な都合で簡単に職場を失うことになります。
派遣元の多くは、実体がない「名ばかり雇用主」です。昨年から、莫大な利益をあげてきた世界的大企業が相次いで「派遣切り」をしました。いわゆる「常用型派遣」が多い製造業派遣でも、派遣先による派遣切りの結果、派遣元の7割がそのまま派遣労働者を解雇しました。
ところが、派遣法では派遣先に対して、解雇は不当だとして雇用責任を争うことが難しいのです。派遣先にとっては便利このうえない制度です。
こうした労働者派遣制度を改め、きわめて例外の場合にしか派遣を利用できないように改正する必要があります。当面、1999年の派遣対象業務自由化以前に戻すことと、ごく例外的な臨時的事由がある場合か、日給5万円をもらえるほどの、本当に専門的な職種にだけ派遣を認めるといった法改正が必要です。(「週刊しんぶん京都民報」2009年6月28日付)