シオン 19日は左京区岡崎にある平安神宮庭園の秋の無料公開日で、たくさんの観光客が訪れ、秋の草花を堪能していました。平安神宮の庭園は3万平方メートルと広く、東西南北の4つの池を中心に各時代の庭園形式を取り入れられた池泉回遊式庭園として名勝に指定されています。
 その中で野の草花が集中している庭園が南神苑。秋の花のハギ(萩)、フジバカマ(藤袴)やシオン(紫苑)が美しく咲いて訪れた人々の目を楽しませています。
 南神苑に入ったすぐの庭園の所々に群生しているハギ(ミヤハギ)の薄紫色や白い花は小さく派手ではありませんが、地につくほどに枝がしだれています(白花はシロバナハギでハギの変種)。文学的な観点での記事は「週刊しんぶん京都民報」9月18日号8面が面白いのでぜひ読んでください。
 「こっちのハギの方がいっぱいできれいに咲いている」と薄紫のハギをバックに写真を撮っている人があちらこちらに。古くからあるキク科のシオンは、2メートルほどの高さの茎の先端が放射線状に広がった枝先に薄紫の白い可憐な花が写真のように散房状に咲いています。今昔物語には、ユリ科のワスレグサに対して思いを忘れない草として記されています(花言葉=君を忘れず)。
 足下には、奈良時代に渡来したと言われている秋の七草の1つ、フジバカマの淡紅紫色の可憐な花が群れて咲いています。近くには源氏物語にも登場する珍しいヒガンバナ科のハマオモトが花も散らせて新緑の実がブドウ状の房になってつけており、ほとんどの人が「これなんだろう? 見たことがない。おもしろー」と見入っていました。(仲野良典)
 「秋の野ににほいて咲ける藤袴 折りておくらむその人なしに」(良貫)