(43)待遇格差大きい
世界で当たり前な同一労働同一賃金
日本の派遣労働の最大の問題点は、派遣労働者と派遣先従業員の待遇格差が大きいことです。フランス、イタリア、ドイツなどのEU諸国では、仕事別に賃金を決める、産業別全国労働協約慣行が定着しています。企業規模が違っても同一労働同一賃金が原則です。派遣労働者も同じ仕事をしていれば、派遣先の大企業従業員と同等待遇が適用されます。
各国の派遣法は、こうした協約慣行があるのに、さらに確認的に「派遣労働者の待遇は、同一労働を担当する派遣先従業員の待遇と同等以上でなければならない」と規定しています。
2006年の韓国派遣法も、EU法に近づいて、派遣労働者は派遣先正社員との間に待遇格差があれば、その是正を公的機関に求めることができると規定しました。
ところが、日本の労働者派遣法には、こうした派遣先従業員との同等以上の待遇を保障したり、差別是正手続きを定める規定はどこにもありません。
現実には、年齢や業務にもよりますが、ほとんど同じ仕事をしていても、派遣社員は派遣先正社員の2分の1から4分の1程度の低い待遇ということが少なくありません。派遣会社は、「正社員が一人辞めたら、その人件費で派遣社員を3~4人雇えます」ということを宣伝文句にして派遣先に売り込みをはかっています。派遣労働について、こうした同一労働差別待遇を公然と言える国は日本以外では世界に例がありません。
派遣社員は「派遣切り」など常に雇用不安を抱えていますから、安定雇用と言える正社員の3?4倍程度の賃金をもらっても割が合わないとも言えます。「雇用が不安定であるのに待遇が数分の一」という日本的派遣労働は、合理性がどこにもなく、労働法や雇用政策上、バランスを大きく欠いた異常なものと言えます。
派遣先正社員との同等待遇を保障する規定を導入することが、正社員雇用削減を防ぐためにも重要であり、派遣労働の弊害を根本的になくすことに直結すると考えられるのです。(「週刊しんぶん京都民報」2009年7月26日付)