(47)同じ仕事なのに…
同一労働同一賃金保障を明記させる
派遣労働は不安定な雇用ですので、せめて高い労働条件を義務づけて均衡を図るべきです。ところが、まったく逆に、正社員の3分の1程度の低賃金しか支払われない派遣労働者も少なくありません。
労働基準法は、国籍、信条、社会的身分による労働条件差別を禁止し(第3条)、賃金について男女差別を禁止しています(第4条)。パート労働法では、正社員とほぼ同様な就労であれば均等待遇が義務づけられます。裁判では、長年、正社員と同じ仕事をしていたパート労働者が差別を訴えた丸子警報器事件で、正社員の8割を下回る賃金の場合、公序良俗に違反して無効であるという画期的な判決が出ました(長野地裁上田支部1996年3月15日判決)。
EU諸国では企業を超えた同一労働同一賃金が原則です。産業別全国協約が未組織労働者に拡張適用されるので、この原則が確立しているのです。しかし、日本では同じ使用者に直接雇用される労働者に限って差別を判断するという、世界には例のない「常識」が行政や裁判所にまで根強くしみわたっています。
この「企業が違えば賃金格差は当然」という「日本的常識」を逆手にとって「間接雇用」を導入したのが、労働者派遣法です。派遣先と派遣元は別企業なので、労働者が同じ仕事をしても、使用者が別なので差別として問題にできないというのです。
ドイツ、フランス、イタリア、韓国などの派遣法では、明文で派遣労働者と派遣先正社員の同一待遇を保障しています。日本の派遣法には、この同一待遇規定がなく世界最悪の内容です。
現行法のもとでは、(1)地域労組などに加入し、団体交渉を通じて派遣先・派遣元に同一賃金を要求すること、(2)違法な点があれば、派遣先を雇用主として同一待遇を求めることが考えられます。
さらに、政権交代の結果、派遣法改正が現実になってきました。ただ、民主党など3党案では「均等待遇」という文言が入っていますが、きわめて不十分です。改正法に「同一労働同一賃金保障」を明記させることが必要です。(「週刊しんぶん京都民報」2009年9月27日付)