(48)なぜ1000円以上に?
生活保護以下の基準改善へ
労働条件の最低基準は主に労働基準法で規定されますが、賃金については「最低賃金法」で健康で文化的な生活を営むための最低額が規定されています。1人でも労働者を雇って働かせる使用者は、この額以上の賃金を支払う義務があります。
日本では企業別労働協約がほとんどで企業毎に賃金が違い、企業規模による賃金格差が大きいのが特徴です。そのために、労組の力が弱い中小企業などでは国が定める最低賃金が重要な意味をもつことになります。
最低賃金は、(1)労働者の生計費(2)同種労働者の賃金(3)通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して都道府県ごとに決定されます。京都府下では、まず、「金属製品製造業817円」、「各種商品小売業764円」など8業種で独自の産業別最低賃金が定められています。次に、これらの適用を受けない労働者すべては、京都府地域別最低賃金が適用されます。現在、時間額717円ですが、 2009年10月17日から729円に引き上げられます。
近年、非正規雇用や中小零細企業などで、生活保護水準以下の低賃金労働者(ワーキング・プア)が多くなりました。そのため、07年最低賃金法改正で、生活保護との整合性に配慮して最低賃金額を引き上げることが確認されました。
従来は、パートやアルバイトなど、世帯内に正社員の夫や親がいる「被扶養者」(家計補助的就労者)を前提に、余りにも低い最低賃金額が算定されてきました。「被扶養者だから賃金が低くてもよい」とする考え方は世界に例がありません。
現在、最低生活費(生活保護基準)は、京都市の夫婦・子ども1人世帯では月約23万円程度です。最低賃金額717円で、これを稼ぐには月320時間(月26日出勤、1日12時間)も就労しなければなりません。これは過労死認定基準を超える長時間労働です。
労働者にとっては、最低賃金1000円でも抜本的改善ではありません。中小企業者の人件費負担を軽減するには、「普遍的生活保障」として教育、福祉、医療、住宅などでの公的サービス充実を図ることが重要だと思います。(「週刊しんぶん京都民報」2009年10月11日付)