(52)業務委託契約?
実態が労働者なら法的に保護される
会社などの事業所で働く場合、通常、労働契約(または雇用契約)を結んで「労働者」として働きます。これに対して業務委託契約は、「個人事業主」として働く場合の契約です。
労働者であれば、労働法や社会保険などが適用されます。たとえば、労働基準法が定める残業代や深夜手当の支払いを求めることができますが、業務委託契約(または請負契約)による個人事業主は、労働者ではないので適用されません。
悪質な会社(使用者)の中には、この区別に目をつけて、実態は労働者として働かせているのに、形式だけ「個人として業務委託契約を結んでいる」として労働基準法などの適用を逃れようとする例が多くなっているのです。労働者でなければ、さらに、最低賃金法、労働安全衛生法、労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険などの適用もなく、使用者としての多くの負担がなくなるからです。逆に、労働者側は、労働法や社会保障上の保護を受けられず、また、所得税でも「給与所得控除」がないなど不利になります。
しかし、労働行政や裁判所は、業務委託契約であっても労働者と同様な実態で働いている場合は、労働契約による労働だとして法的な保護をします。個人事業主であれば、(1)仕事を進めるうえで個人裁量が大きい、(2)労働時間を自主的に管理できる、(3)機械などの生産手段がある、(4)専門的技術・知識がある、(5)担当業務の一部を下請に出せる、(6)報酬が高く、成果に応じて払われる、などの「独立性」が必要です。独立性がなければ、労働法上の労働者といえます。
まず、募集広告や口頭説明などから契約内容を確認して下さい。もし、文書では業務委託契約であっても、就労の実態から、労働の独立性がなければ、労働者として保護されます。ただ、ご相談例は、脱法承知の悪質な場合と推測できます。対抗するには法的知識が必要です。1人ではなく、地域労組などに相談して知識を身につけながら、関係機関への手続きをとるのが有効です。(「週刊しんぶん京都民報」2009年12月13日付)