2カ月後に働いている機械製造会社が倒産することになりました。同時に従業員全員が、数10万円~100万円程度の退職金をもらって失業することになります。不況の影響や経営方針の失敗などが原因だと思うので、簡単に職を失うことに納得できません。倒産する経営者に何か求めることはできるのですか?(40歳、男性、京都市)

賃金などの確保や雇用継続求める

(53)2カ月後に倒産イラスト・辻井タカヒロ

 倒産は法律用語ではなく、会社が経済的に破綻した状態のことをいい、通常は、手形や小切手の不渡りを出して銀行取引が停止された状態を指します。経営者の都合だけの不当な「偽装倒産」もありますので、正確な情報を集めることが必要です。いずれにしても、労働者にとっては生活の基盤を失う深刻な状況ですので機敏な対応が重要です。
 まず倒産には、破産法や会社更生法によって裁判所を通じて法律上の手続きを利用する場合がありますが、実際には債権者や利害関係者間での話し合いによる「任意整理」や「私的整理」がほとんどです。労働者は賃金や退職金などの「労働債権」を持つ債権者です。これらは法的に「先取特権」が認められています。
 しかし、任意整理では力関係によることが少なくないので、債権者集会などで当然の権利を強く主張する必要があります。
 とくに、会社が倒産したからと言って労働者が直ちに雇用を失うわけではありません。労働者は会社に対して雇用継続を求める権利を有しています。倒産といっても、会社がなくなる「清算型」だけでなく、何らかの形で会社が生き残る「再建型」や、会社の全部または一部を他の会社に譲る「営業譲渡」型もあります。こうした場合は、再建会社などに対して引き続き雇用を求めることが重要です。
 要するに会社倒産の場合、(1)当面の生活を支えるための賃金・退職金の確保と、(2)雇用継続や次の就職先を求めて声を上げることが重要です。
 しかし、会社倒産手続きは複雑で、法的知識や経験がないと対応が難しく、労働者1人で会社や他の債権者を相手にすることは適当ではありません。急いで法的措置をとらないと権利を失うことも多いので素早い対応が必要です。
 そこで、(1)同じ境遇に置かれた仲間と相談して労働組合を結成すること、(2)それが困難なときは、地域労組に加入して会社を相手に団体交渉を申し込んだり、その顧問弁護士を通じて法的対応をとることが重要です。(「週刊しんぶん京都民報」2010年1月10日付

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。