(61)欧米、韓国と比較〈4〉
産業別労組が主流で未組織にも協約適用
日本では多くの労働組合が企業別に組織されています。同じ企業の従業員だけで組織される形態ですので、従業員が多い大企業では数千人から数万人の労働組合として一定規模を確保できます。
しかし、従業員が少ない中小企業では労組も弱小な組織になります。現に、従業員5000人以上では組織率が50%近くある一方、100人未満の企業では約1%の組織率しかありません。中小企業の多い日本では、本来、企業別組織は適当なものではありません。
世界では、企業別労組は日本と韓国以外にはありません。欧米の労働組合は、企業を超えて組織されています。同一企業の従業員だけで組織される組合は、使用者の息のかかった「御用組合」ということで法的には許されません。
また、日本の労働組合の多くが正社員だけの組織で、協約も組合員にしか適用されません。使用者が決める就業規則のほうが協約より優位に立つという現実は、世界的には異例な状況です。
フランス、ドイツ、イタリアでは18前後の産業毎に代表的な産業別労働組合があって、産業に所属する労働者全体に適用される労働協約を締結します。それが労働条件の8~9割程度を決定し、企業を超えた同一労働同一賃金などを確立する根拠になっています。
3年ごとの協約改訂では労組は労働条件改訂を使用者団体に迫り、実際にストライキが行われることも稀ではありません。労働組合は、労働協約を非組合員を含めて産業に所属する全労働者に拡張適用しています。その結果、9割近い労働者が協約適用を受け、「協約なければ労働なし」という言葉が生きています。
韓国では、近年、「民主労総」が欧米的な産業別組織への転換を進め、金属、保健医療などでは企業別から産業別組織への転換を実現しています。
日本でも近年、地域労組やユニオンなどの新しい組織が増えていますが、非正規労働者や中小零細企業労働者を含めた多くの労働者が組合活動に参加したり、協約適用を受けることが重要な課題です。(「週刊しんぶん京都民報」2010年5月16日付)