機械製造会社で働いています。会社が倒産するといううわさが流れています。パートなどの非正規雇用の人は全員辞めさせられ、仕事量も少ないので間違いないような気がします。倒産前に何かすべきことはありますか?(35歳、男性、京丹後市)

濫用を許さない整理解雇の4要件

(67)倒産のうわさありイラスト・辻井タカヒロ

 会社(使用者)から労働契約を一方的に解約する「解雇」は、簡単にはできません。解雇によって労働者が雇用という生活の基盤を失うからです。
 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効と」されます(労働契約法第16条)。もし会社が本当に倒産するとしても、別会社に営業譲渡されて従業員を引継ぐ場合もあります。労働者が倒産で必ず辞めさせられるわけではありません。
 労働者に落ち度がないのに、会社都合による人員整理目的の解雇の場合、裁判所は、それが有効となるために厳しい要件を求めてきました。いわゆる「整理解雇の4要件」で、(1)人員整理の必要性、(2)解雇の必要性、(3)対象選定の合理性、(4)信義則にもとづく手続き、の4つです。このうち一つでも欠ければ濫用的な解雇として無効となります。
 とくに、パートを正社員より優先して解雇することは、無条件で認められているわけではありません。正社員と変わらない労働をしているか、会社に不可欠な労働力であるかなど、その実情に応じて判断されます。
 また、会社が黒字なのに海外進出や新たな企業展開を真の理由とした「偽装倒産」や「攻撃的人員整理」も考えられます。こうした悪質な場合は、過去の裁判例では濫用的解雇とされてきました。
 会社が密かに生産拠点を別に移す一方、パートを大量解雇した三洋電機事件で、大阪地裁は、整理解雇4要件を適用してパートの解雇を無効と判断しています(1990年2月2日仮処分決定)。
 会社が倒産や解雇を強行してきた場合、裁判を起こさないと強く対抗することができません。労働者が一人で闘うことは至難ですが、労働組合の力を使えば集団的に対抗することができます。
 三洋電機事件では、パート労働者が地域労組に加入して、その援助を受けながら裁判を闘い、原職復帰して雇用を守る結果となりました。倒産に対抗できる態勢を作るためにも、地域労組などに相談して下さい。(「週刊しんぶん京都民報」2010年8月8日付)

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。