(71)55歳で定年早い?
高年齢者雇用安定法8条に違反して無効
日本では多くの企業で定年があり、「定年制」として会社の就業規則によって従業員一律に定年を定めるのが通常です。法的に「定年」とは、「労働者が一定年齢に達したことを理由に労働契約を終了させること」(=解雇)です。
一般に、「定年で会社を辞めさせられるのは、やむを得ない」という常識があるようですが、労働契約法は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働契約法第16条)としており、定年による解雇であっても、合理的な理由を欠き権利濫用的な場合、または、「差別定年」など法律に反している場合は無効となります。
とくに、「高年齢者雇用安定法」という法律では、「事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には、当該定年は、60歳を下回ることができない」(第8条)と定めており、鉱山の坑内業務以外は、60歳以上定年が使用者の義務となっています(1998年4月以降)。
さらに、年金受給開始年齢が65歳に引き上げられたのに対応して、2006年に同法が改正され、現在では、65歳までの安定雇用を確保するために、(1)定年年齢の引上げ、(2)継続雇用制度の導入、(3)定年の廃止のどれかを、2013年3月末までに講じなければならないとされています(同法第9条)。
ご相談は55歳定年ということですが、これは明らかに高年齢者雇用安定法第8条に違反して無効です。会社には、少なくとも「60歳定年」に改めさせることができます。むしろ、改正法の趣旨からは、「定年の廃止」か「65歳定年」にするのが望ましいと言えます。
実際には会社側の対抗策として、定年年齢前後で大幅に賃金が下がる非正規雇用形態にして高齢者を「継続雇用」する例が多いので注意が必要です。こうした悪い制度を許さないためには個人ではなく、地域労組も含めた労働組合を通じて対抗することが重要です。(「週刊しんぶん京都民報」2010年10月17日付)