(74)就活で勉強できない
早期化の弊害を社会問題化する
従来は、大学生は卒業年度の4年生になってから就職活動をするのが一般的でした。労働力不足の高度成長時代に、企業が優秀な学生を早期採用しようとし、それに対して、学業に弊害があると大学側が反発してきました。
かなり以前、文部省は通達で4年生の10月からの採用活動開始を指示し(1952年)、翌年、大学、経営者団体、文部省の間で初めて「就職協定」が締結されました。その後も、経営者側の「青田買い」と呼ばれる協定破りがあり、弊害が指摘されるなかで、「会社訪問8月開始」などを内容とする「就職協定」が改めて結ばれました(86年)。
しかし、規制緩和の流れの中で、再び経営者からの強い「解禁」要望が出され、九七年、一方的に「就職協定」が廃止され、就職活動早期化が一気に進んだのです。
09年には、半数以上が3年生の12月以前に就活を開始しています。大学関係者は「就活早期化の弊害」を指摘し、学業充実のためにも企業側に自粛を求めています。
ただ、以前とは異なる事情もあります。一つは、非正規雇用が労働者全体の3分の1を超えるほどに増加したことです。以前は新卒者のほとんどが正規雇用採用でしたが、現在、かなりの部分が非正規雇用化しています。
とくに、年金受給開始を60歳から65歳にする制度導入に伴い、技術・経験で高いレベルにある高年齢者を非正規雇用形態で継続雇用する措置の導入も進みました。
経済危機も重なって、企業側は高い人件費が必要な新卒正規採用を可能な限り、少数に絞ろうとしています。こうした事情が個々の学生にも反映して、何とか正規雇用に就こうと就活が早期化しているのです。
日本経団連は、早期選考を慎むようにという「倫理憲章」への賛同を企業に呼びかけているだけですし、政府の対応は余りに鈍いのが現実です。就活早期化には、個別に解決できない社会問題の性格があります。学生自身が問題点を考え、議論して声をあげていくことが必要だと思います。(「週刊しんぶん京都民報」2010年12月5日付)