工場でアルバイトしています。先日、工場内の作業中に手をケガしてしまい、治療費が数千円かかりました。アルバイトでも労災は出るのですか? どういう手続を行えばいいのですか?(28歳、男性、宇治市)

作業中の負傷は療養・休業補償受けられる

(76)アルバイトでケガイラスト・辻井タカヒロ

 アルバイトを含めて労働者が業務上、負傷、病気、死亡した場合、使用者(会社)に災害補償を求めることができます(労働基準法第75条以下)。この災害補償責任を確実に果たさせるために、国はすべての事業主に労災保険加入を強制しています。
 工場で作業中にしたケガは、「業務上の負傷」ですので、治療費にあたる療養補償と、療養のために賃金を失う日数分の休業補償を受けることができます。
 休業補償額は、「平均賃金」の6割です。平均賃金は、賞与などを除き、労災から遡って3カ月間の総賃金額を総暦日数で割った額です。残業代などを含めて、仮に3カ月の総賃金が91万円、総暦日が91日であれば、平均賃金は1日1万円ですから、休業補償は1日6000円となります。
 実際には、労災保険のほうが、労働基準法の災害補償よりも有利ですので、事業所を管轄する労働基準監督署に労災保険給付の請求手続きを行います。
 ご相談の場合、療養補償給付と休業補償給付の支給を請求することになります。労災保険の指定病院であれば、病院を通じて療養補償給付の請求手続ができます。
 療養補償給付であれば、自己負担はまったくありません。健康保険で受診して3割の自己負担をしていたり、労災保険指定病院でなかったときには、手続きをやり直せば治療費数千円は戻って来ます。
 休業補償給付は、休業4日目以降について給付基礎日額(=平均賃金)の6割です。さらに、労働福祉事業として給付額の2割相当の「特別支給金」を加えて合計8割が支給されます。
 前の計算例では1日8000円支給されることになります。労災保険では休業最初の3日分は出ませんので、その分は労働基準法の休業補償を使用者(会社)に請求することになります。
 ただ、労災保険給付を受けるには、事故について事業主の証明が必要です。「労災隠し」をする使用者も少なくありませんので、いのちと健康を守るセンターや地域労組に相談されることを勧めます。(「週刊しんぶん京都民報」2011年1月23日付

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。