(81)自己都合退職
一方的不利益変更に集団的な対抗が必要
「退職」は、労働者から労働契約を一方的に解約することです。使用者からの「解雇」とは違って、労働者に不利になることが少なくありません。雇用保険では「離職理由」と失業手当の間にきわめて重要な関連があります。
まず、離職理由によって失業手当の給付日数が大きく違います。50歳で被保険者期間が20年以上の場合、離職理由が「解雇」「倒産」であれば、最長330日支給されますが、「自己都合退職」の場合、150日と半分以下になります。
また、離職理由が「正当な理由のない自己都合退職」の場合、職業安定所長が「最長3カ月の失業手当支給制限」の処分をする可能性があります。その結果、解雇等で離職したときには、離職票提出後、約1カ月で失業手当が振込まれるのに対して、自己都合退職で離職すると、離職票提出後、実際には、約4カ月経過しないと受け取ることができません。
会社としては、解雇や会社都合退職で離職させると、国からの各種助成金を停止されます。そこで、実際にはそうでないのに、会社が、離職票の離職理由欄に「労働者の自己都合」と勝手に記載する「偽装自己都合退職」が増えています。労働者としては、会社が「労働者の自己都合」と離職理由欄に記載しても、それに対して「不同意」と記入することが重要です。
ご相談のように「賃金の3割をカットする」のは、明らかな労働条件の不利益変更です。賃金規程など「就業規則」を変更するのだと思いますが、重要な労働条件である賃金を合理的な理由なく、また、不当に大幅な変更を一方的に行うことは「権利濫用」として無効である、というのが裁判所の考え方です。
できれば、職場や地域の労働組合を通じて、会社の一方的不利益変更に集団的に対抗することが必要です。少なくとも、ハローワークでは「大幅な賃金カットがあった」という事情を詳しく説明して、離職には「正当な理由」があった、と強く主張することが必要です。(「週刊しんぶん京都民報」2011年4月3日付)