(83)個人請負で残業代ない
実態が労働者なら労基法適用される
実態は労働者と変わりがないのに、委託契約等による「個人請負」(名ばかり事業主)が増えています。労働者であれば労働基準法等が適用されます。例えば、法定時間(1日8時間、1週40時間)外残業については、残業協定の締結や、25%以上の割増賃金(残業手当)の支払いが必要です。
しかし、個人請負であれば労働基準法が適用されず、残業手当も不要となります。その他、労働・社会保険の適用もありません。使用者はこうした残業手当や保険料などの費用負担を避けるために「個人請負」を導入するのです。
これを改善するには労働組合を通じての集団的な対応が最も効果的です。イナックスメンテナンス事件では「カスタマーエンジニア」(CE)たちが、会社と委託契約を結び、イナックス製品の修理補修で働いていましたが、労働条件が劣悪だったので、労働組合を作って改善を求めました。
ところが、会社側は、CEは、労働者ではないから、団体交渉に応ずる義務はないとして団交拒否しました。事件は労働委員会に持ち込まれ、大阪府労委、中労委で組合が勝ちましたが、使用者側が行政訴訟で争い、東京高裁がそれを認める、逆転の不当判決を下していました。
最高裁は、今年4月12日の判決で、高裁判決を破棄しました。最高裁は、詳細な事実認定を行い、CEが、(1)会社業務を主として担っていて会社組織に組入れられていること、(2)契約内容を会社が一方的に決定していること(3)報酬が労務提供の対価としての性質を有していること(4)CEが会社の修理補修の依頼に応ずべき関係にあったこと(5)指揮命令を受けて場所的、時間的に拘束されていたこと等を認めました。
つまり、その就労の実態から、CEたちが労働組合法上の労働者であることを認めたのです。時間がかかりましたが、CEたちは団体交渉を通じて労働条件を改善することができることになりました。ご相談の場合も、仲間同士や地域組合に相談して労働組合作りを考えてみて下さい。(「週刊しんぶん京都民報」2011年5月1日付)