(87)正規の労組でない?
地域労働組合も団体交渉の主体
会社の言い分は、まったくの誤りです。会社は、従業員が加入している労働組合との団体交渉に誠実に応じる義務があります。
労働組合法は第7条で、労働者の自主的な団結を妨害する一連の行為を「不当労働行為」として禁止しています。同条2号は、「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」を挙げています。
この場合、団体交渉の主体となる労働組合は、会社を単位に組織される正規社員だけの企業別労組に限られません。非正規社員が一人だけで加入した地域労組であっても「雇用する労働者の代表者」となり、団体交渉の主体と認められます。
つまり、非正規社員でも会社(使用者)が雇用する労働者ですし、地域労組は労働者の代表者ですので、会社が地域労組との団体交渉を正当な理由なく拒否することは、団交拒否の不当労働行為として禁止されるのです。
日本では同じ会社の正社員だけで組織される労働組合(企業別労組)が普通です。しかし、法的には、労働組合は、企業別組織である必要はありません。むしろ、外国では、金属や運輸など産業別に企業を超えて労働者を組織する産別労組が一般的です。
企業別労組でもKBS京都労組や広島電鉄労組など非正規社員を組織化して注目される例もありますが、多くの場合、非正規社員の加入を認めていません。そうした中で地域労組は、非正規社員が団結権や団体交渉権を行使するための有力な方法となっているのが現実です。
不当労働行為については、労働委員会に救済を申し立てることができます。京都の場合、地域労組から京都府労働委員会に会社を相手に不当労働行為の救済を申し立てれば、審問などの手続きを経て、団交応諾の救済命令を出してもらえます。会社がこれに従わないときには、中央労働委員会で再審査されます。
ご相談の場合、明らかな不当労働行為ですので、救済申し立てをしただけで、まともな会社であれば団体交渉に応ずるのが普通です。(「週刊しんぶん京都民報」2011年7月3日付)