(88)茶髪で解雇!?
合理的な理由なく解雇権濫用で無効
まず、店長が「辞めてほしい」と言っただけでは解雇通告とは言えません。会社(使用者)の文書による正式な解雇通告が必要です。労働者は、その文書に解雇の理由を示すことを求める権利があります(労働基準法22条)。
次に、解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」、解雇権濫用として無効です(労働契約法16条)。「茶髪」などファッションや身だしなみは、基本的に個人の自由です。使用者が「派手すぎる」からと不利益な扱いをすることは許されません。業務上、茶髪を制限できるのはきわめて例外な場合だけです。通常、飲食店のアルバイトが茶髪であっても業務に支障はありません。
判例では、茶髪の染め直しを命じられて、これを拒否したトラック運転手の解雇が無効とされています(1997年12月)。最近では、郵便局の窓口業務を担当していた男性職員が、長髪やヒゲを生やしていたのに対して、当局が「身だしなみ基準」に反するとして、長髪をやめ、ヒゲをそるよう執拗に求めました。
さらに不利な人事評価をして賃金カットをしたり、職務面で差別をしたことが争われました。裁判所は、この「身だしなみ基準」は合理的な制限を超えているとして、当局(使用者)の行為がいずれも違法であるとして、賃金減額分や慰謝料に相当する損害賠償を命じています(大阪高裁2010年10月27日)。
もし、店長が突然「辞めてほしい」といっただけでなく、会社として正式な文書で解雇通告をしてきたとしても、茶髪が理由では合理的な理由と言えず、解雇権濫用で無効です。
いずれにしても不当な解雇通告は無視して、これまで通り職場に出勤するのが基本です。16歳の女性が茶髪解雇を撤回させた「びっくりドンキー事件」(2007年3月)では、青年ユニオンの支援を受けて解決できました。会社と対抗するには一人ではなく、地域労組などの援助を受けるのが有効です。(「週刊しんぶん京都民報」2011年7月24日付)