(89)非正規なくせる?
身分的な差別雇用世界では「非常識」
日本のパート、有期、派遣などは、世界に例のない「日本的」非正規雇用です。その一番の特徴は、雇用が不安定な上に劣悪な待遇という点です。いわば「身分的」ともいえる程の「差別雇用」です。
EU諸国にもパート、有期、派遣といった類似の雇用形態があります。しかし、EU指令で、正社員と同じ仕事をしていたら同等以上の待遇を保障する「均等待遇」や「非差別」を原則としています。
フランスでは有期雇用や派遣労働の利用には、賃金の10%相当の「手当」の支払いを義務づけています。韓国の「非正規職保護法」(2006年)は、有期、派遣、パートについて正社員との「差別禁止」を明記しています。
世界では「同一価値労働同一賃金」が原則です。「非正規だから人件費が安い」という日本の「常識」は「世界では非常識」なのです。
むしろ、使用者にすれば同じ仕事をしているのに低賃金で、「雇止め」や「派遣切り」など、正社員よりも簡単に雇用調整できる非正規雇用が広がれば、正規雇用は必要がありません。
実際、正規雇用は66%にまで減少しています。女性や若年者では非正規が半数を超えています。現在の50~60歳代が退職すれば、非正規が労働者全体の半数を超えると予想されます。非正規が多数になる一方で、正社員の雇用や労働条件も劣悪化しています。
個々の企業は非正規を多用することで、短期的に経営を維持できるかもしれません。しかし、長期的に社会全体をみたとき、その基盤が大きく崩れます。
非正規は長期の熟練形成が保障されず、一人前の職業人になる希望を持てません。非正規の低賃金では生活の自立が困難です。青年は結婚できず、すでに進んでいる少子化のスピードが加速し、年金や医療などの社会保障を支える現役世代が弱体化します。
非正規雇用をなくすために、労働者全体が正規・非正規の分断を乗り越え連帯をして初めて、「誰もが人間らしく働き、安心して暮らせる社会」を作る道を切り開くことができるのだと思います。(「週刊しんぶん京都民報」2011年8月7日付)