サービス業で働いています。会社の同僚から「労働組合に入らないか」と誘われました。「何でも相談できる仲間もできるし、レクリエーションもあるよ」と紹介されています。私は会社に特に不満があるわけではないのですが、気軽に入ってもいいのでしょうか?労働組合で何をしたらいいのでしょうか?(25歳、女性、京都市)

問題が生じたとき「保険」の意味持つ

(90)労働組合に誘われたイラスト・辻井タカヒロ

 いまは会社に不満がなくても、使用者(会社)は経営状況や他企業との競争を口実に、労働者に色々なしわ寄せをしてくることが少なくありません。業務量が以前よりも大幅に増えて残業が続いたり、不況を理由にしたボーナス・カットなど、労働条件の切り下げ、リストラ(人員整理解雇)の例も増えています。いざというとき、労働者は弱い立場ですので、一人では使用者に対抗することはできません。
 しかし、労働組合を通じてなら、多くの労働者が一致して強く対抗することが可能です。その意味では、労働組合は何か問題が生じたときの「保険」の意味をもっています。できるだけ多くの労働者が組合に参加することで「保険」の役割は確実になります。
 とくに、労働組合は、雇用や労働条件の維持と改善のために連帯する、労働者の自主的な組織として、憲法28条では団結権、団体交渉権、争議権が認められ、労働組合法でも多くの保護を受けています。
 労働条件の最低基準を保障する労働基準法も、労働条件の一層の改善は、労働組合と会社の団体交渉による集団的関係を通じて行われることを予定しています。むしろ、労働組合がないと、労働基準法さえ守られないのが職場の現実です。
 また、労働組合では、労働者の様々な権利について学んだり、組合役員や仲間との相談や組合内外の色々なネットワークにもつながることができます。
 労働組合には、いくつか種類があります。日本では、一つの企業(職場)に所属する従業員だけを組織する企業別労働組合が一般的ですが、最近では地域を単位に誰でも加入できる地域ユニオンなども増えてきています。
 加入する際には、(1)外部(上部)の組織としっかり連携しているか、(2)最近数年間に活発な活動(争議、裁判、学習)をしてきたか、(3)労働者全体を守ろうとしているか等を確認して下さい。雇用や権利をしっかり守れる、会社から自立した組合か、名ばかりの信頼できない組合かが、加入を考えるときの重要な判断ポイントです。(「週刊しんぶん京都民報」2011年8月21日付

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。