告発・京都市国保 〈3〉高すぎる国保の果てに… 保険料払えず、生活保護に
持病治療で6万円滞納
「今日もまた、焼きそばか…。もう限界」。真っ暗なワンルームの中、灯りはテレビだけ。キャベツだけが入った焼きそばを食べながら、柏原光子さん(57)=仮名、調理アルバイト=は、生活保護申請を決意しました。
月収約14万円で、家賃は月5万円。仕事で痛めた指と肘の炎症、持病の高血圧の治療で月5000円以上の医療費がかかります。
毎月の国保料1万7000円は払いきれず、約6万円滞納しました。
「食費と電気代、生活費を切り詰めてきたけど、どうしても国保料は払いきれなかった」
10月、腕と指の激痛のため職場を退職。「生活と健康を守る会」に相談すると、生活保護を勧められました。受給者は医療費の自己負担がなく、保険料を負担しなくてもいいからです。
「本当は働き続けたいけど、お金と体は限界。せめて国保料が安ければ、もう少し頑張れたかも」とつぶやきます。
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実姉の葬式にも行けず
京都市の1000人あたりの生活保護受給者(保護率)は、00年度の20.2から、30.1(10年度)へ増加。09年の保護率は、政令市中3番目の高さになっています(表)。
「悪いけど、お姉さんの葬式には行けないわ。交通費がなくて…」。11月初め、西島とし子さん(58)=仮名、アルバイト=は、青森県の姉の葬儀に参加できないことに悔し涙がこぼれました。
子ども2人を大学に行かせるため、約200万円を借金。無職の夫の年金と西島さんのパート代を合わせ、月収は約25万円です。
国保料は月額約4万円。生活費や子どもの通学費などを支払うと、国保料は払えません。1年以上滞納し続け、昨年末に全額自己負担の資格証明書に切り替えられました。
持病の高血圧の薬を1年以上飲まず、腕の骨にヒビが入っても放置するなど、無茶な生活を続けましたが、保険証と医療を受けるため、10月に生活保護を申請しました。
「今の生活で、こんな高い国保料が払えるわけ無いでしょう。行政は子どもを育てる親の気持ちがわからないのでしょうか」
生保受給者が怒りの声
生活保護を受給し始めた人たちからも、高すぎる国保料に怒りの声が上がります。
10月から受給している男性(43)は、「白血病とうつ病のため収入が減り、生活できなくなりました。生活困窮者に高い国保を払えというのは行政のやることか」と怒ります。
10月半ばから受給した女性(42)は、こう訴えます。
「足をケガして働けないのに高い国保料を請求され、つらかった。収入が少ない人ほど苦しむ制度はおかしい。高い国保料はすぐに下げてほしい」
生活苦に国保料が追い打ち
全京都生活と健康を守る会連合会の大本義雄事務局長の話 リストラ・失業や、非正規雇用、売り上げが落ち込む自営業者が増える中、高すぎる国保料が追い打ちをかけるように市民の生活を苦しめています。
生活保護水準以下の収入で生活される方が増えています。そうした方が、国保料を滞納したり、病気になって働けなくなり、やむを得ずに生活保護を申請するという相談が増えています。
私が今相談にのっている50代の方も、病気をこらえて働き続けたため、体を壊し、生活保護申請することになりました。もっと早い段階で、お金と時間を心配せずに治療ができれば、こんなことにならなかったかもしれません。
昨年は5万世帯以上が国保料を滞納し、4414世帯で資格証明書が発行されました。医療機関の窓口で支払う金額の一部負担金減免制度もありますが、国保料を滞納すると制度を受けられないこともあり、03年に617件あったのが、昨年は113件へ激減しています。
生活が苦しく、医療を受けられない方がたくさん生まれています。高すぎる国保料はすぐに引き下げるべきです。