女子水球日本代表ポセイドンジャパン 機動力で五輪初切符つかめ
力強く水の中を支配する
「水上の格闘技」とも呼ばれる水球(WaterPolo)。女子水球は00年のシドニー五輪から正式種目になりました。出場できるのは8カ国で、アジアの出場枠は1。五輪挑戦3回目となる日本は、初のアジア頂点、ロンドン五輪出場を目指し練習に取り組んでいます。チーム愛称の「ポセイドン」は、ギリシャ神話の海を司る神で、“力強く水の中を支配する”という決意を込めています。
竹重茉里(たけしげ・まり)選手はチーム最年長のベテラン。大学2年時にアテネに挑みましたが、アジア予選2位で敗退。以降、出産などもあり一時は水球から離れていましたが、再度五輪に挑みます。「目標である五輪出場をつかみたい。今回が最後のつもりで頑張ります」と決意をみなぎらせます。
昨年5月のワールドリーグで初めて代表招集され、今回五輪初挑戦の中田萌(なかた・もえ)選手は水球選手としては小柄(160センチ)ながらも、「自分の持ち味の泳力を生かして活躍したい。なでしこジャパンのように注目を集めたい」と目を輝かせます。
「水球王国」から代表4人
鴨沂や乙訓、鳥羽など水球部の強豪校があり、かつて国体5連覇(男子)の記録を持つ京都は「水球王国」として知られます。竹重、中田両選手以外にも、現在海外リーグでプレーする小中美沙(23)=京都踏水会出身=、安本智恵(23)=鴨沂高校出身=も京都出身です。
京都市南区生まれの竹重選手は、小学5年の時、京都踏水会で水球に出会いました。「京都は小学校から水球ができる環境があるのが強み。ジュニア時代からやっていると基礎がしっかり身に付きます」と語ります。
三重県出身の中田選手は、元々長距離の競泳選手で、「タイムが上がる」とのアドバイスで始めた水球にはまり、鴨沂高校に進みました。
「退水」とるキレのある動き
海外チームと比べてパワーや体格で劣る日本の攻撃で欠かせないのが、相手選手のファウルを誘い「退水」(20秒間の退場)を取ることで、ゴール前で数的有利をつくる戦略です。その要となるのが、ゴール正面に陣取るフローターの竹重選手。「沈められたり、もみくちゃにされるポジションですが、キレのある動きで相手を翻弄したい」と話します。
ゴール前でのパス回しやカウンター攻撃の起点となる右ドライバーの中田選手。競泳で培った持ち味の高い泳力と代表メンバーも驚くスタミナで、「細かく動いて海外チームを引っかき回したい」と意気込みます。
鴨沂高校水球部顧問で、日本代表ヘッドコーチの藤原秀規さん(42)は、「相手の裏をつく素早い動きで退水を取れる竹重、スピード・持久力に優れた中田、それぞれ日本の攻撃に欠かせない選手。持ち味である機動力とチームワークで勝負したい」とアジア予選を見据えます。
国内ではまだまだメジャースポーツとは言えない水球ですが、「スピーディーな展開、派手なシュートシーンは迫力満点ですよ」(中田)、「ゴール前での選手同士のやり合いも見もの。女子でも水着が破れることがあります」(竹重)とそれぞれ魅力を語ります。今回のアジア予選は国内での開催。「ぜひ会場で私たちの全力プレーを見て欲しい。初の五輪出場をかけて頑張るので、応援よろしくお願いします」(「週刊しんぶん京都民報」2012年1月1日付掲載)
国内チームは男女とも、大学クラブや各地のクラブチームが中心で、男子は日本選手権、女子は全国女子水球競技大会で日本一を決めます。
オリンピックでは、男子は3大会連続金メダルのハンガリーやイタリア、女子では、オーストラリア、アメリカが強豪国です。