工作機械メーカー「カシフジ」(京都市南区)の労働組合、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)京滋地方本部カシフジ支部の青年部が昨年11月、3年ぶりに定期大会を開き、活動を再開しました。「将来を担う青年として、技術をしっかり受け継ぎ、もっとよい会社にしていきたい」と今春、春闘の準備に燃えています。

「会社もっとよくしたいやろ」

 昨年11月22日、カシフジ(京都市南区)社内の食堂で開かれた青年部大会。
集まった約40人の作業着姿の青年を前に村井一輝青年部長(27)が発言し、大会に向けて集約した要求アンケートの結果を分析しました。「みんな『会社をもっとよくしたい』と思ってるやろ。その気持ちが実現できるような技術継承をしてほしい。それを実現していくのが青年部の方針です」。ざわついていた会場は静まり、訴えに聞き入りました。
 村井さんは、「僕ら役員も、労働組合が何なのか、よくわからずにスタートしました。でも、自分たちの思いをちゃんと出し合えば、一緒に立ち上がることができると確信しました」と語ります。
 JMIUは金属機械や自動車、コンピューター・ソフトの情報機器などの関連産業の労働者でつくる労働組合。青年部は全国的に再建を進め、1月29日にも中央青年部の再建大会を開く予定です。

歯車加工のトップメーカー

 カシフジは本社工場で生産、営業は京都と東京の2拠点で行う中小企業ですが、自動車や二輪、建材などで使用されている、歯車の歯を切削加工する工作機械では国内50%以上のシェアを誇ります。中国や韓国、アメリカなどの海外ユーザーにも製品を納入しています。
 同支部は、従業員全員が自動的に組合に加入するユニオンショップ制。昨年は、3人の非正規労働者を正社員化する成果を上げ、これまでも結婚・出産一時金、産休・育休取得など、多くの労使協定を締結しています。
 同社は近年、10人前後の採用を進め、青年部に所属する28歳以下は48人に上ります。組合員約150人の3分の1を占めますが、労働組合の役割についての理解が十分にできないまま、自主的運営に任せられている間に弱体化。新入組合員歓迎会しか開けていない状況でした。

声集めて春闘要求

 昨年6月の役員改選。入社8年目、技術加工職場の村井さんは、お互いに譲りあって青年部長が決まらないことに業を煮やし、青年部長に名乗り上げました。「組合のことはよくわからなかったけど、はっきりしないのが嫌いで…。職場で経験も積んだ自分が動けば、ほかに考える人が出るかもしれないと思ったんです」と言います。
 青年部の活動再開に向けては、まず役員が職場での思いを発言、意見することから始めました。初めての会議で、一言も発しなかった役員も、青年部を指導・援助する支部書記長の山中康司さん(42)がていねいに聞いていく中で、「有給休暇は忙しくて取りにくい」「会社の社員教育に『しつけ』という項目があるのがいやだ」などの意見が上がりました。
 話し合いを重ねる中で、さらに詳しく要求をつかもうとアンケートを実施。9割近くの回答が寄せられ、中には「マニュアル以上の細かい技術を教えてもらえない」など、技術継承教育への不安の声が寄せられました。こうした声をもとに、大会では「未来のカシフジを担う、青年全体のレベルアップは絶対必要!」とスローガンを掲げました。今年、2006年以来となる春闘に向けて、具体的な要求を作ることを確認しました。

組合活動受け継ぎたい

 副部長の東誠さん(27)は、一昨年まで別の製造メーカーで働いていました。「サービス残業なし、一時金もでるなんて労働組合のすごさが実感できた。せっかくの組合で活動しないわけにいかない」と言います。昨年、東京・明治公園で開かれた「人間らしい暮らしと雇用」を求める全国青年大集会に参加した中西邦紘さん(22)。「多くの青年が一緒に立ち上がっていることに感動した。実績のある組合だからこそ、しっかり受け継ぎたい」と話します。
 村井さんは、「会社側は『技術継承は十分している』とよく言いますが、私たち青年からすれば不十分です。でも、『できている』『できていない』と言い続けても未来はない。具体的な要求を出して解決していくことこそ、未来を担うカシフジ青年の行動です。春闘では青年が声を出していきたい」と決意を語っています。(「週刊しんぶん京都民報」2012年1月1日付掲載)