再稼働の危険を告発する(2) 東洋大学教授・変動地形学 渡辺満久さん
地震・津波の想定甘い活断層の試算に疑問
大飯原発再稼働をめざし、関電は付近の活断層を再検討し「安全」だとしましたが、その試算に疑問が無いわけではありません。
試算では、これまで認めてこなかったFO-A断層とFO-B断層(長さ35キロメートル)を連動するとし、700ガル(地震動)と想定しました。そして「連動の可能性は極めて低い」としながらも、「念のため」両断層と熊川断層の3つが連動(長さ63キロメートル)し、760ガルと試算しています。これらについて、関電は「炉心の安全裕度(1260ガル)を下回るから安全」としています。
「念のため」という形で計算される場合には、数値が小さく出るような手法がとられると言われています。神戸大学名誉教授の石橋克彦さんは、「760ガルは予測の下限の値であり、実際には安全裕度(1260ガル)を超える可能性もある」と指摘されています。
そもそも、ストレステスト以前に、ほとんどの原子力関連施設周辺において、活断層が過小評価されていると考えています。こうした甘さが福島原発事故を生んだ可能性があると思っています。
私自身は、絶対に原発をなくすべきという立場の研究者ではありません。しかし大飯原発はじめ、日本のほとんどの原子力関連施設には、地震・津波の想定には甘さが残っていると思われます。現状のまま、ストレステストの結果だけに基づいて原発を再稼働させることには反対です。
地震動想定が過小
断層が長くなれば、地震の揺れ(ガル)が大きくなるというのが地震学での一般的な学説ですが、関電が大飯原発で示した想定値は、学説に矛盾したものになっています。
全国の原発でもっとも大きい地震動想定は柏崎刈羽原発。付近を通る断層は長さ36キロメートルですが、2300ガルを想定。一方、大飯原発付近の断層は柏崎刈羽の2倍近い63キロ(3つの断層が連動)ですが、関電は760ガルと試算。柏崎刈羽の3分の1にすぎません。関電は地震動想定について詳しい根拠も示さないまま、再稼働に突き進もうとしています。(「週刊しんぶん京都民報」2012年4月29日付掲載)