金地院のアジサイ
「あぢさゐの八重咲くごとく八つ代にをいませ我が背子見つつ偲はむ」(岩波書店『新日本古典文学大系より引用:八重は八重咲きでなく群がって咲くという意味)と万葉集にも詠まれているアジサイが京都の各地で咲き始め、人々のこころを癒しています。
アジサイはユキノシタ科アジサイ属。ガクアジサイの花が装飾花に改良され丸型に花を咲かせているのがアジサイ。これが中国を経由してヨーロッパに渡来し紅色に咲くアジサイや大きな丸型の花に改良され再び日本に持ち込まれました。日本では青から赤に色変わりがするので心変わりする「七変化の花」として嫌われていました。このため、神社仏閣の庭園などでは栽培されませんでした。
しかし、今では宇治の三室戸寺、木津川市加茂の岩船寺、左京区の三千院手前山麓、右京区の梅宮神社、伏見区の藤森神社など盛んに植樹され、多くの観光客に親しまれています。大きな丸形の豪華なアジサイが好きな人もあり、またガクアジサイ、ヤマアジサイやアマチャアジサイなど古来からあるガクアジサイ系が素朴で可愛いと愛でる人も多いようです。
写真は東山の南禅寺塔頭寺院のひとつである金地院(こんちいん)の東照宮(徳川家康の遺髪と念持仏とを祀る。1628年造営で国の重要文化財)の門前に咲く浅みどり一輪のアジサイです。
また、京都府立植物園のアジサイ園では国内外から多様なアジサイを収集し植生しており、おすすめのアジサイ園です。アジサイの花は今が一番美しい時期です。(仲野良典)
「紫陽花や白よりいでし浅みどり」(渡辺水巴)