「歌う尼さん」やなせなな 最期の子守唄
戦争の悲しみストレートに
同じさだめ背負い
向けた銃口の先で
僕とよく似ている
若い兵士が震えていたんだ
うたうよ最期の子守唄に祈りを込めて
愛を知るぼくのこの手が
君のいのちを奪わずに済むように
4日、奈良市内のショッピングセンターで開かれたミニコンサート。包み込むような歌声が会場に響き、涙ぐむ人も。やなせさんが8月に必ず歌うという『最期の子守唄』は、家族を思い、戦地で命を落としたすべての兵士への鎮魂歌です。発表当初、親しいファンからは、「今までの曲と違い、歌詞がストレート過ぎて驚いた」という反応がありました。やなせさんは、「戦争の悲しみを包み隠さずに言いたかった」と話します。
歌の出発点は、南方戦線で戦死した祖母の弟が祖母にあてて書いた手紙。“お国のために命を落とすことは惜しくない”、そう勇ましく綴られた手紙の末尾、「小さな震えるような文字で、『もう一度お姉さんに会いたかった』とありました。これが本心。衝撃を受けました」。いつか曲にしたい──戦争の記録、資料をあたる中、「戦地で対峙した相手にも同じように愛する家族があったはず」、そう考え歌詞を書きました。
96歳になるやなせさんの祖母は今もこの手紙を語る時、大粒の涙を流すといいます。「私を含め、戦争を知らない世代が大半です。この祖母の涙の意味を次の世代に伝えるために歌い続けたい」と語ります。
“黒い大きな力”に歌で対峙
沖縄をはじめ各地で反対の声が広がっている新型輸送機オスプレイの配備問題にも声を上げたいといいます。「誰が望んであんなものが送り込まれてくるのか。何か黒い大きな力で私たちの暮らしが踏みにじられていると感じました。簡単な問題じゃないと思います。でも、許したらいけない。日々の暮らしの尊さ、命の大切さを歌うことで、自分なりの怒りの思いを発信していければと思っています」
29日(水)午後1時から佛教大学四条センター(京都市下京区)で、講座「歌う尼さん いのちを見つめるひととき」の第2回「最期の子守唄~戦地から届いた叫びと祈り」があります。定員150人。受講料1000円。問い合わせTEL075・231・8004(同センター事務局)。(「週刊しんぶん京都民報」2012年8月12日付掲載)