文化都市の名に反する

前公共建築賞近畿地区審査委員会委員長 山﨑泰孝さん

 多くの劇場、美術館の建築やその審査、指導に携わってきましたが、劇場建築の大前提は、どんなパフォーミングアート(表現芸術)を育てていくのか、ビジョンを明確にすることです。ヨーロッパの各首長はアートに対するビジョンを持ち、それを実現しています。
 ところが、京都市は京都会館について、目指すべきビジョンもなければ、我々市民や芸術家としっかりした意見交換もしていません。ただ改築ありきでしかありません。
 芦屋市から京都市に住居を移転しましたが、それは京都市に新しい文化、芸術を育てる考えを持っているのではと期待してのことでした。期待は裏切られました。芸術都市、文化都市の名に反する京都市に失望しています。
 京都にふさわしい劇場とは、オペラなど西洋音楽や日本の伝統芸能を乗り越えた、21世紀の日本固有のパフォーミングアートを育てる場にすることではないでしょうか。
 解体工事を一時的に中止して、我々市民と芸術家と一緒に、今後の京都会館のあり方を心開いて議論することが市に求められています。(「週刊しんぶん京都民報」2012年9月9日付掲載)