オミナエシ 日中はまだまだ猛暑が続いていますが、朝晩は秋の気配が感じられるこのごろです。草花も一足早く秋の七草の花が満開になっています。
 写真は滋賀県の近江八幡市の水郷界隈に群れをなして花咲いている七草の一つオミナエシです。付近には七草のヤマハギ(マメ科)、ススキ(イネ科)、クズなども満開。秋の七草はこの他にフジバカマ(キク科)とキキョウ(キキョウ科)やカワラナデシコ(ナデシコ科)がありますが八幡では見かけませんでした。
 フジバカマは京都岡崎の平安神宮西神苑(9月19日は全苑一般無料公開の日)、キキョウは東山区東福寺の塔頭の天徳院庭園(有料)がきれいです。
 クズは全国いたるところに精力的に群生しており、大きな葉っぱの大型のツル草で手入れをしていない樹木、垣根やフェンスや電柱などに絡まっています。花は大きな葉っぱに隠れて目立ちませんが紫色の房になって咲いています。マメ科のクズ属(Pueraria lobata:葛)で茎は木質で昔は綱などにも利用されていました。根っこも大きくて多量のデンプンが含まれており何回も晒して葛粉を採取し葛湯や葛餅にし、葛根湯として薬用にも用いられています。和名の葛は産地である奈良県の国柄(くず)に由来するといわれています。
 写真のオミナエシはオミナエシ科オミナエシ属(Patrinia scabiosaefolia:女郎花)で多年草。高さは写真のように1メートル以上になり葉っぱは対生し羽状に別れ、茎は枝分かれして先端に散房状に黄花をつけます。和名漢字の女郎花の語源を探ると、「をみな」の語源は「女」であり、「えし」の語源は「めし(栗飯)」の訛りと、美女をも圧倒する美しさという意味で「へし(圧)」との説があります。しかし近世の遊女ではないことは確かで、万葉原表記では「をみな」を娘、姫、美人、佳人といった漢字が当てられています(伊東ひろみ著「恋する万葉植物」他)。なお、ひと回り大きくて白い花を咲かせるのが同じ科のオトコエシ(男郎花)です。
 この近江八幡のオミナエシの群生を京都市内から来たという女性らは、「これオミナエシ、こんなにたくさんきれいに咲いているなんて、感激やん。空の青とぴったり」と口々にいいながら見とれていました。(仲野)
 「萩の花尾花(をばな)葛花(くずばな)瞿麦(なでしこ)の花女郎(をみなえし)また藤袴(ふじばかま)朝顔(あさがほ)の花」(山上憶良「万葉集」巻8-1538:あさがほは現在のキキョウのこと)