米から買う物はない

元愛知教育大学教授 井爪康之さん

 京都教育大学を卒業後、広島大学大学院を経て63歳まで、小学校から大学までの教壇に立ってきました。家は江戸期から続く農家ですが、祖父の代から兼業農家として代を継いできました。今は米と豆を作っています。TPPへの参入は反対です。農業だけでなく医療や保険、労働などあらゆる分野で関税を取っ払いアメリカなどの企業の利益が最優先されるという極めて不平等な内容だと思います。私が農業を続けている理由は2つです。物を育てることが性に合っていること、自分たちが食べる物は自分たちで作ることが人間の本来の姿だからです。日本人は農耕民族で明治・大正時代頃までは、国民の多くが第1次産業に従事していました。日本の風土に合った米や野菜、魚が食事の中心です。主食の米が日本で余っているのにどうしてより安い米を買う必要があるのか。不当に安い米を輸入するということは、作っている人から収奪することではないですか。今の日本がTPPでアメリカから買うものは少ないと思います。(「週刊しんぶん京都民報」2012年10月14日付掲載)