宇治に咲くツワブキ
紅葉狩りは少し早い宇治市の宇治塔の島界隈。大勢の行楽客が深まる秋を楽しんでいます。宇治橋の少し上流の宇治川右岸の恵心院の本堂前の庭園に絶えることなく訪れて暖かい日よりさす縁台でしばしの休憩をしています。
恵心院は弘法大師によって開かれた古刹龍泉寺が前身で、「往生要集」を編纂した恵心僧都源信(源氏物語宇治十帖に登場する横川の僧都のモデルといわれています)によって再興され、以降寺号を恵心院と称し、後世に秀吉や家康の庇護を受けて大きな伽藍が建立されたと伝えます。現在は本堂と表門だけですが、先代の住職が草木が大好きで、本堂前庭に全国からもたらされた約125種の草木が植生され四季折々の花を咲かせています。
晩秋の今は紅紫色と珍しい真っ白なシュウメイギク(学名はAnemone hupehensis var. japonica:キブネギクとも。和名は花が菊に似ているので秋明菊と名付けられていますがキンポウゲ科のイチリンソウ属です。ちなみに漢名は秋牡丹)が咲いています。
その隣の垣根に沿ってツワブキ(写真)がきれいに咲いています。ツワブキの学名はFarfugium japonicum。ツハブキとも言います。葉っぱがフキに似ており、また表面に少しツヤがあるので石蕗という和名ですが、フキの仲間でなくキク科のツワブキ属です。キク科の仲間ですが、古くから若い葉柄は佃煮にしたり、刻んで油で炒めると春の香りがしとても美味しいといわれます。
また、葉をあぶったり蒸し焼きにして腫物や火傷、痔などに良く効く民間薬としても利用されていました。
草木の花がなくなる晩秋に、大きな葉っぱから茎がつきだして黄色い花が庭園を引き立てています。(仲野良典)
「山里の草のいほりに来て見れば 垣根に残るつはぶきの花」 (良寛)