ガラス細工のようなユキワリイチゲ
京都市左京区の府立植物園の生態園の草たちは、虫ではないが啓蟄(けいちつ)のように一斉に動き出しはじめました。いたるところに群生する黄色いフクジュソウ、可憐な小さな白い花を散りばめるオウレン、新緑のフキノトウが地面から顔をニョキッと出し、ユキワリイチゲがガラス細工のような瑠璃色の花を咲かせています(写真)。
ユキワリイチゲ(学名Anemone keiskeana:キンポウゲ科イチリンソウ属でキクザイチゲ、アズマイチゲ、ヒメイチゲやエゾイチゲなどと兄弟)は残雪の早春に美しい華を咲かせるので「雪割一華」の名前(ルリイチゲ:瑠璃一華とも言う)で、2月から4月にかけて丘陵地や山麓の道端に生育します。イチゲの仲間たちのほとんどは早春の一時に花咲かせ、花後は葉が枯れ根株だけ残して地上からは消えていきます。このような春の一時花輪咲かせるのをスプリング・エフェメラル(Spring Ephemeral)と呼んでいます。春一時だけ姿をみせる昆虫もスプリング・エフェメラル(ephemeral=「短命の」「1日限りの」という意味)です。
ユキワリイチゲの小葉は三角状卵形で鋸歯があって表面にはしろい斑紋があり、裏側は紫色を帯びています。花(花弁はなくて萼片)は少し青みがかった透き通るような美しさで3~3.5センチほどで、萼片は12~22個ほどです。植物園のユキワリイチゲは移植したのもですが、桂川上流の保津峡に野生で生息しているとの報告があります。花言葉は「幸せになる」。(仲野良典)
「枯れ山裾 雪割一華 凛と咲き」(良典)