桐 日本で古くから親しまれている桐。その桐の木に紫色の花を5月の今、見事にいっぱい咲かせています(写真は井手町から木津川市に少し入った里山に生息する大きな桐の木です)。
 キリ(学名Paulownia tomentosa:ノウゼンカズラ科[ゴマノハグサ科やキリ科とする説も]:落葉広葉樹)の原産は中国と言われています。花の長さは5~6センチほどで花冠は筒状の少し細い釣り鐘状で、枝先に円錐花序を直立して付けます。桐材は湿気を通さず、ひびが入ったりせず、しかも柔らかくて軽い良質な木材としてタンスや鏡台など家具や琴(箏)などの楽器、下駄や彫刻材など用途も多用で重宝されています。
 桐の文化的な関わりとしては、まず鳳凰の止まり木として神聖な木とされていました(中国ではアオギリ)。桐は中世からは天皇から賜る家紋(五三桐や五七桐の桐葉章)として足利尊氏や豊臣秀吉など武将も好んで使用しました。現憲法で主権在民になった今でも各種の勲章や皇宮警察本部や法務省の紋章、外務省のパスポート(氏名や写真記載のページ)の文様(表紙は菊)にもなっています。各種の国家機関の紋章、大学などの校章、現在使用している大きな500円硬貨表も桐で「菊の御紋」に準じた文様という扱いになっているようです。(仲野良典)
 「君をみていくとせかへしかくてまた桐の花さく日とはなりける」芥川龍之介
 「桐の花露のおりくる黎明にうす紫のしとやかさかな」木下利玄