山科川のトケイソウ
梅雨入り宣言されたとたんに照りつける太陽、鴨川や桂川の水量も少なくなっている京都です。山科区から伏見区の宇治川まで流れる山科川も浅くなっています。野草も刈り取られて爽やかな風が通る土手にトケイソウの花を発見。蕾(つぼみ)はたくさんありますが、花を咲かせているのは大きな一輪だけ(写真)です。
トケイソウの原産地は南米ブラジルで日本には江戸時代享保年間(1723年頃)に渡来。トケイソウと言う和名が付けられました(長崎ではボロンカツラ)。写真のように花被と副花冠とで時計の文字盤に、雌雄の蕊(シベ)が針に見立てて和名はトケイソウ(時計草)。ところがヨーロッパでの命名法はまったく違います。学名をPassiflora caerulea L.(英名はBlue Crown Passion-Flower)言い、この命名がスゴイのです。16世紀にイエズス会士たちが南米に渡ってこの花を発見しました。彼らはこの花を見て、3本の柱頭はキリストの手足を打ってはりつけた釘、5本の雄蕊は5箇所の傷で、多数の放射状の副花冠は後光にたとえ、さらに花びらはユダとペテロを除く使徒と見立てて、passioはラテン語の苦悩、flosは花の意味で「キリストの受難」と名付けたとかいわれており(病の花という説も)、花言葉も「神聖な花」「信ずる心」「宗教心」などです。
トケイソウ(トケイソウ属トケイソウ科)の種は、中南米で他にアジアやオーストラリアにも分布しており、約400種ほどに多様化して、種間交配種もたくさんあるようです。山科川のトケイソウ(日本に最初に伝わった種と思われます)は、誰かが花壇に植えていたのを土手の垣根の基に移植したのでしょうか。野草の刈り取りされた土手ですが、ここだけは避けられていました。(仲野良典 『花の西洋史事典』他参照)