安倍内閣の経済政策・アベノミクスや世界的な株高影響による株価上昇により、半年間で府内の上位6社の大株主が総額約714億円もの莫大な儲け(時価総額の上昇)を上げています。大株主が資産を増やす一方、リストラ・雇い止めされた労働者からは「大株主が儲けても、仕事がない」「カネがあるのなら再雇用してほしい」と怒りと悲鳴が上がっています。

京都の主な個人大株主の株時価総額 時価総額(昨年11月14日と5月31日の終値を比較)が最も増えた個人大株主は、大手電気機器製造「日本電産」(京都市南区)の永守重信社長で、約233億円。
 次いで、消費者金融業「アイフル」(京都市下京区)の福田光秀取締役(創業者社長の長男)が約217億円、電子部品大手「京セラ」(京都市伏見区)の稲盛和夫名誉会長が約163億円、電子部品メーカー「ローム」(京都市右京区)の佐藤研一郎名誉会長が約36億円、「王将フードサービス」(餃子の王将、京都市山科区)の加藤欣吾氏ら役員5人が約35億円、堀場製作所(京都市南区)の堀場雅夫最高顧問(長男の堀場厚社長との合計)約31億円となっています。
 日本共産党の志位和夫委員長は、京都市内で行われた演説会(5月24日)で、アベノミクスで最も利益を上げた個人大株主が「ユニクロ」会長の柳井氏一家だと指摘。「株式だけで半年で1兆円ももうけている。新卒社員の『使い捨て』を繰り返し『ブラック企業』として批判されているユニクロがもうけ頭。こんな経済政策がまともなものといえるのか」と批判しています。
 府内の大株主も、不当な電機リストラや雇い止めを行ってきた電機・機械企業など、ユニクロ同様に労働者を使い捨てする「ブラック企業」が大もうけをしています。

日本電産  「虚業」やめ、会社へ戻せ

 最も時価総額を上げた永守氏は、「日本電産」の1203万株と、関連4社(日本電産リード、日本電産コパル、日本電産コパル電子、日本電産トーソク)合わせて1855万株を保有。「日本電産」は、80年代から現在までに37社でM&A(合併・買収)を実施し、同社の自己資本を16倍化(95年と比較)し、時価総額は約9400億円にまで成長させています。

 昨年9月に日本電産で雇い止めにあった男性(62)の話 京都地裁で再雇用するよう求めて裁判をしています。永守氏は株高で保有株の評価益が膨らみ、さらに配当や円安による利益が出ているはずです。すぐに私を会社に戻してほしい。永守氏はM&Aを繰り返し、会社の時価総額を上げることに躍起になっているようですが、今は『虚業』で儲けるのではなく、創業の原点に戻り、会社の組織強化として雇用を守り、世界で大きく変化している技術や事業を生み出す時だと感じています。政府が『虚業』だけを支援するようでは、日本のものづくり産業に未来はありません。

京セラ  日航株で80億の“儲け”

 「京セラ」は一昨年、同社創業者の稲盛和夫氏が名誉会長をつとめる「日本航空」(東京都品川区)株を上場前に破格で大量購入し、現在までに少なくとも80億円の儲けを上げています。
 京セラは、日航の会社更生計画終了直前の11年3月、国が保有する日航株を1株あたり2000円で、250万株(50億円分)を購入。現在(5月31日)、日航株は5220円へ上昇しています。京セラ保有の日航株(時価総額)は、50億→130億5000万円となり、80億円以上も時価総額が増えています。同社は現在、保有株式を382万株へ増資しており、さらに儲けを増やしていると見込まれます。

 JAL不当解雇撤回裁判原告団の山口宏弥団長(B777機長)の話 京セラ・稲盛氏らは上場時に株で巨大な儲けをあげる一方で、パイロットや客室乗務員を大量解雇しました。さらにアベノミクスで一部の株主をもうけさせるなど許せません。そもそもJALの経営不振は、政治の圧力による不採算路線の運航やホテル・リゾート開発事業の失敗などによるもの。バブルを生む金融緩和などではなく、空の安全を守るため、不当解雇した労働者を雇用するのが企業や行政の役割ではないでしょうか。

ローム  リストラ必要なかった

 「ローム」は昨年、グループ全体で大規模なリストラ計画を打ち出し、不当な退職勧奨を行う「リストラ面談」を実施。今年1月末までに219人が退職したと発表しています。

 「リストラ面談」を受け、退職に追い込まれた男性(50代)の話 何度も退職強要された面談は辛く、辞めるしかありませんでした。ついこの間まで、円高で利益が上がらないといっていたのに、円安と株高で経営が改善しているようです。数千億円もの内部留保を使えば十分に雇用を守れたはずです。就職活動を続けてきましたが、ハローワークで中高年の就職は本当にありません。政府が本来やるべきことは、雇用を守り正社員を増やすことだと思います。

「週刊しんぶん京都民報」2013年6月9日付掲載)