20130617-01.jpg 梅雨はどこにいったのか、連日猛暑でカラカラの天気で野草たちもくたびれています。府立植物園の鬱蒼(うっそう)としている植物生態圏も職員さん数人で水やりに余念がありません。「ほんとに自然であれば水やりは必要ないんですよ。でもここの自然生態圏の樹木や野草は全部人間が持ち込んで創り上げたんです。だから水をやらないと枯れちゃう」と説明しながら長いホースを延ばし、汗を流して放水していました。
 そんな生態圏には薄紫のホタルブクロ(螢袋)、白色のササユリ(笹百合)、黄色の花が群がるハマボッスやオレンジ色がひときわ目立つノカンゾウ(写真)などの花が真夏の訪れを告げています。
 ノカンゾウは、ユリ科ワスレナグサ属の仲間で学名はHemerocallis longitubaで、1日の美しさと言う意味。兄弟にはエゾカンゾウ、ユリスゲ、ハマカンゾウ、ヤブカンゾウなどがあります。草地や溝の縁でやや湿り気のある所に生えています。多年草ですが花は1日花、しおれた昨日の花と明日開花する蕾(つぼみ)が一緒にみられます。大輪で雑然とした里山や森の中にあって燃えるオレンジの大輪は目立ちます。漢字は野萱草と書きますが、この仲間で八重の花はヤブカンゾウ(藪萱草)です。中国では萱の意味は「かや」、「わすれなぐさ」(「忘憂草」、「萱草(ケンソウ)」とも)で「この花を見ると憂さを忘れる」と昔から言われています。
 原産は中国ですが、いつ日本に渡来したのか不明で、帰化植物の一つになりました。ところが、ノカンゾウは見事な花は咲かせますが、実がなりません。つまり種子がないのです。だからどうして全国に広まったのか不思議。江戸時代にはいろんな花が品種改良されて、園芸化されましたが、このカンゾウだけは手を付けなかったようです。別に改良しなくてもアチコチにいっぱい咲くのですから。
ところが今、アメリカではものすごく人気があって品種改良が盛んで、真っ赤な花、黒紅色やミニカンゾウや豪華な八重咲きなどもあり、最近は日本に輸入されているようです。(仲野良典)