原発再稼働おかしい

弘道館館主 太田とおるさん

 先日、第55回ベネチアビエンナーレを訪ねました。ベネチアという千年以上続く共和制都市国家がイタリアに併合されたのち、自分たちの街がいかなる価値観において生きていくのか、という葛藤のなかでうまれた美術のオリンピックです。
 彼地にいて日本から伝わってきたのは、アベノミクスによる株価の話や、経済成長の方針的な話ばかりでした。成長し、金をえて、何がいいことがあるでしょうか。子どもの頃、祖母から「金」のことは言うな、「欲しがるな」と口すっぱく言われました。金より重要なものは山ほどある。今の世の中でこういうことをいうと、子どもじみたことをとか、理想論では飯が食えぬと言われそうですが、この方が私には不思議です。
 むしろ1950年以降の日本の経済史は異常なものであると検証すべきなのではないでしょうか。「知足」という日本の美徳を資源と考えることはできないのだろうか?
 コストなどもうけの原理は恥ずかしいこととすれば、原発などいらないわけです。あれだけの事故を起こした原発を再稼働させ、輸出までする。東日本大震災の復興予算を全く無関係の事業に流用するのはおかしいのではないですか。今さえよければよいのですか。今回の選挙の争点が原発になっていないことを恥としるべしです。民のための政治を実現していただきたい。(「週刊しんぶん京都民報」2013年7月21日付掲載)