可憐なゴマの花
小さな粒のゴマは誰でも知っていますが、その花は案外知られていないようです。
8月下旬から9月始めにかけてゴマ畑にはホワイトピンク色で釣り鐘状の花をいっぱい付けています(写真は滋賀県近江八幡市安土町)。
インドあるいは北アフリカが原産地で栽培ゴマは、紀元前1300年頃にはギリシャで栽培されていたゴマ(和名=胡麻<紀元100年頃に中国西域シルクロード(胡)を経て日本に伝えられ、種実がアサ(麻)に似ていたので胡の麻で胡麻>:学名=Sesamum indicum)は、茎が四角で直立し、背丈は約1メートルほどで、葉の下部は対生し上部は互生しています。
写真の花は約2.5センチで長楕円の釣り鐘状に咲きます。果実は短い円柱状し小さな種をいっぱいつけます。種の色は品種によって黒(黒ゴマ)、白(白ゴマ)、金色(金ゴマ:主にトルコで栽培)などがあります(ヨーロッパは白ゴマのみ流通)。
ほとんどは炒って潰し、蒸して圧搾しごま油(精製すれば最上級品の天ぷら油)にします。また炒って擂りつぶしてゴマアエやごま塩のようにそのまま御飯などに振りかけます。また油は医薬や工業用にも用いられています。日本では古くからゴマ油は灯油として、また葉は野菜として料理されていました。カルシウム、マグネシウム、鉄、リンなどミネラル含有量は抜群でタンパク質、食物繊維、ナイアシンやビタミンA,B1,B2,B6,Eなどやリグナン(抗酸化物質のセサミン)もたっぷり含まれています。世界でのゴマの生産は4分の3がアジア諸国(ミャンマー、インド、中国、エチオピアなど)で、日本は年々需要が増大し毎年数万トン護摩種を輸入しています。
こんな利用度の高いゴマも、ゴマに関するする言葉には、「ごまかす」「ごますり」「ごまのはい(え)」など余り良くないことに使われています。「ごまかす」はもともと、胡麻胴乱という小麦粉に胡麻を加えた菓子で中が空洞なことから胡麻菓子が「胡麻かす」という説(「誤魔化す」とも)があります。「ごますり」は胡麻を擂ると四方八方にこびりつくから(上位の者に両手をすりあわせて取り入ろうとする仕草からとも)だったり、「ごまのはい」は弘法大師が護摩を焚いた灰だと言って押し売り金品をかすめ取る(「護摩の灰」)、又は「胡麻の蠅」で胡麻に蠅が飛んでいてもわからないから)などの説があります。「アリババと40人の盗賊」に出てくる「開けゴマ」(アラビア語=lftah ya simsim:英語=open sesameを訳したもの)はぱちんとはじけ開く胡麻(sesame)から来ているとか…。他の説もあります。(仲野良典)
「暑気せめぐ土むつとして胡麻咲けり」(飯田蛇忽:1885-1962)