シオン ススキやクズなど秋の七草が河川の土手などに見られる季節です。その七草にまじってきれいなシオンの花もあちこちに咲いています。写真は先月の大雨で宇治川から逆流して道路冠水などした東高瀬川の土手に群生するシオンです。
 シオン(紫苑)の学名はAster tataricus 。(アスターはギリシア語で星の意味で花の形から、タタリウスはアジアダッタン地方原産の意)で、漢名は花の色から紫苑。ジュウゴヤソウ(十五夜草)という別名もあり、オニノシコグサ(鬼の醜草)はシオンの異称ともいわれています。東アジアが原産でシベリア、モンゴル、朝鮮など東北アジア一帯に自生しています。日本では絶滅危惧種(植物)になっており自生地は九州や中国地方の山地に僅か見られるだけです。ほとんどは庭園や畑の際などに植生されています。キク科シオン属でシラヤマギク、ゴマナやノコンギクなどとは兄弟。同じキク科にフジバカマ(フジバカマ属)、ハハコグサ(ハハコグサ属)やハルジオン(ムカシヨモギ属)などの従兄弟があります。
 日本での栽培は古く、平安時代の『今昔物語』にはユリ科のワスレナグサに対して「思いを忘れない草」として登場しています。花言葉も「君を忘れず」や「遠方の人を思う」などです。根っ子はせき止めや利尿作用の漢方薬として使われています。(仲野良典)
「栖(すみか)より四五寸高きしをにかな」(一茶)
「淋しさをなほも紫苑ののびるなり」(子規)