江戸期の御用印判司「鮟鱇窟」主で京都の古伝道統の篆刻を継ぐ水野恵氏が率いる「辵璽林」門下生らによる「辵展」が、京都市中京区のギャラリーみすやで始まりました。水野恵氏は「週刊しんぶん京都民報」で連載中の小説「今しかおへん」のモデルでもあります。3日まで(11時から18時、最終日は17時)。
今年のテーマは「扉」。24人の書や篆刻39点が展示されています。水野氏の書は「先度他」、「ドーゾオ入リヤシトクレヤス」。「先度他」は仏教の教えにある言葉で、菩薩が仏になるための修行を示した言葉。自分のことは後回しにして他の人々を悟りの世界へ渡してあげるという意味があるといいます。「この言葉は辵璽林の基本です。印は書や領収書など、相手のために使うもの。篆刻をする人は用途があるから作って来たわけです。必要な人、思いのある人を後ろから押してあげる、それが我々の修行やと思います。私はつまりドアボーイですわ」と水野さん。
展示で、扉の意味はそれぞれの受け止めにより違った表現となっています。
「米斗釆第五」は曲の冒頭、ジャジャジャジャ-ンが「かく運命が扉をたたく」と言われていることから選んだ言葉です。「来者不拒」は、扉は来る者は拒まないが、開くも閉ざすも人の心次第という意味が込められています。篆刻は13作品。生命の誕生が扉をこじあけることから「羽化」、「即時一杯酒」はまずは一杯と扉の先を心配するよりも今の自分を精いっぱい生きているか?と問うています。
水野氏は「今年もよくできたと思っています。力作をぜひ見に来てほしい」と話しています。