ヒヨドリジョウゴ 三寒四温の頃になって、里山や河川など散歩を楽しむ人が増えはじめました。伏見区にある桃山城や天皇陵近隣の公園や杜でも、老若男女が散策を楽しんでいます。温かい日差しを浴びる伏見桃山城・治部池(豊臣秀吉政権の五奉行の1人で関ヶ原で敗退した治部少輔石田三成の居宅があったとされる)附近の木々には、赤い実をつけたヒヨドリジョウゴが絡みついています。
 ヒヨドリジョウゴの学名はSolanum lyratum。和名の漢字表記は鵯上戸[ヒヨドリジョウゴ]で、ヒヨドリが群がって食べたり、酒を飲んで(=上戸)騒ぐさまからの名前。野菜のナスや雑草のワルナスやイヌホオズキなどと同じナス科です。樹木の枝などに絡みつく多年草のつる草で、林の中のあちこちで見られます。ヒルガオに似た葉っぱは互生し、8月から10月頃、白色の花弁が羽根突きの羽根のように後方に強く反り返った独特の花を付けます。果実は1センチほどの大きさで、多くは赤く熟して越冬し、木々に絡みついた鮮やかな赤い実が冬枯れの野を彩ります。
 ヒヨドリジョウゴは全草に頭痛、嘔吐、下痢、呼吸中枢マヒなどで死亡する場合もあるソラニン(ジャガイモの新芽や青い部分などにもあります)を含み、食べられません。毒草は同時に漢方薬にもなり、乾燥させて漢方薬「白毛藤」として、解熱、解毒、利尿などに用いられています。(仲野良典)
 「冬枯れに 鵯上戸 赤く跳ね」