シャガ 西山北の麓一帯に広がる竹林はこれから筍シーズンに入ります。筍や竹の産地の大枝・大原野や向日市西北一体の竹林です。そして向日市と西京区その一角、福西東通りの東側多種多様な竹垣などが延々と続く竹のトンネルは自然が満喫できます。付近には物集女城趾、古墳や皇后陵などもあって散策もってこいの小径です。
 竹の小径は第2京都回生病院から第6向陽小学校までの5キロほどでよく整備されています。中間地点付近に洛西竹林公園があり、京都特産のキッコウチク、クロチクや天然記念物のキンメイモウソウ、オウゴンチク、ホテイチクなどの竹やチゴザサ、ミヤコザサ、クマザサなどの笹、約110種類が集められて植栽されています。また園内に竹資料館があり外国の珍しい竹や竹工芸品などいろいろ展示されています(入館無料)。写真は公園内の亀甲竹(キッコウチク)圏で竹の足下のシャガの白い花とのコントラストの清純な風景は絶妙です。
 竹は植物分類ではイネ科。イネ科は約700属、6000種ある大家族です。この内、タケやササの仲間は約45属、670種で熱帯から温帯の大部分に分布しています。タケとササの区別はタケノコの皮が早く落ちるものをタケ、長く残っているのをササとのことです。キッコウチク(亀甲竹:学名Phyllostachys heterocycla f.subcombexa Miatsum:モウソウチクの突然変異。別名ブツメンチク「仏面竹」。別と言う説あり)は写真のように竹稈(チクカン:竹竿)の下方部分が交互に盛り上がるのが特徴です。上の方は普通のタケとかわりません。名前はその1節が亀の甲に似ているところから亀甲竹と呼ばれています。観賞用に庭園などに植えられています。京都特産で火で炙り磨いて床柱、花器や結界(柵で仏具の一つ)などに仕上げます。京都府指定伝統工芸品に指定されている。テレビに登場していた歴代の水戸黄門が突いている杖はこの亀甲竹です。
 若い筍の収穫はすでに始まっています。竹林農家の方が畦道で、未だはしりの筍を掘り出していました。「筍掘りはこれからです。今はこの通り、土がほんの少し浮かんで頭だけちょっとのぞかせている。まだ若くて、刺身にもなる絶品の筍です。糠や米のとぎ汁などで湯がくと美味しいです」と話しながら土を払って鎌で根っ子を整えていました。近くの農家の人は「若い筍は値段が張りますよ。焦げ茶や黒っぽくなった筍はグンとやすくなるけど。掘り出しているところでは少しは安いかな?」と言います。よく訪れ散策を楽しんでいると見うけられる年輩の夫婦連れが立ち寄って高価な若筍を手土産に購入している風景もあります。
 シャガ(学名Iris japonica)は山地の少し湿った斜面などに4月から5月ごろに群生します。花は白紫色で艶があってきれいです。ヒガンバナと同じく3倍体で果実はなりません。シャガという和名は同じアヤメ科のヒオウギ(和名、桧扇でオレンジ色の花)の漢名である射干(シャカン)を借用した名前です。(仲野良典)
  「蜂の巣の太鼓の如く竹の春」(日句)、「ことづてを言ひて筍括らるゝ」(雨石)〈両句共:三省堂刊高浜虚子著『季寄せ』改訂版より〉