可憐なユリノキ
森林や街路樹の多くの樹木は、春先から初夏にかけて様々な花を咲かせる季節です。桜、桃や梅より大きな樹木の花は大抵が地味で小さく、仰ぎ見上げないと見えません。そんな中でユリノキ(大阪市立大学理学部附属植物園=大阪府交野市)は、チュウリップによく似た可憐な中型の花で、鑑賞できます。
ユリノキは街路樹や公園樹など何処にでも見られるモクレン科の落葉樹。生育が早く、20~30メートルの直立の大木になります。和名は百合の木(漢名は百合樹)です。学名のLiriodendron tulipifera Lと言い、ギリシア語のirionユリ+dendron樹木でユリの木。tulipiferaはチュウリップのような花と言う意味です。英語名はTupip treeで写真のようにチュウリップに似ていますね。花径は約6センチ。花は黄緑色で花弁に内側に蜜を出している橙黄色の部分があります。5月が一番の見頃。
原産地は北米東部で、その昔、北米の先住民がこの大木をくり抜いて丸木舟(カヌー)をつくっていたと言われています。日本には明治初期に渡来し各地に植樹されました。葉は互生で特異な四角形で、半纏に似ているから半纏木との名前や相撲の行司が持っている軍配に似ているので軍配の木とか奴凧に木などとも言われています。
同植物園は1941年(昭和16)3月、「満蒙開拓団」移住者の訓練施設とし発足した「大阪市勃興亜拓殖訓練同乗」として開設。敗戦直後の45年9月に「大阪市立農事練習所」になり、50年に大阪市立大学に移管されて理工学部附属植物園(その後理学部附属)に。今年は60周年です。主に樹木が中心の植物園で日本国内(国内産の樹木育成450種。桜、梅、椿や果樹のゾーンから絶滅危惧植物の収集・保全も)と外国産の樹木(スギ科など針葉樹からユリノキ、フウなど高木性の外国産落葉樹の鑑賞樹木など)が各ゾーンごとに育成されています。各樹木には名前や簡潔な解説の札も付けられ、生涯学習の場や、園児や小学生の自然学習の場として多くの人が訪れています。
「百合の樹の 広葉ひらめき 散るを見つ 閉門どきの 庭をよこぎりて」(鹿児島寿蔵)