咲き始めたヒガンバナ
9月に入って朝晩はすっかり涼しく秋の虫が鳴くこの頃です。秋の野草といえばキク、ハギ、コスモス、そして万葉集に読まれている秋の七草などたくさんあります。
写真は知恩院末寺の勝念寺に咲くヒガンバナです。当寺院の本堂前庭参道には20数種約100株の赤紫、白、ピンク咲のハギの花が咲き乱れています。その手前の門を入った足下に可愛い六地蔵、手前に赤と白のヒガンバナが咲いていました。
9月の秋分の日前後に河川敷や田圃の畦や墓地などに群生するヒガンバナの別名にはマンジュシャゲ(インド語で赤いと言う意味)、ハミズハナミズ(花が咲いているときは葉っぱ見えず、葉っぱが生育しているときは花を見ないという意味)の他に、シビトバナ、ソウシキバナ、ステゴバナ、テンガイバナという暗いイメージの名前も付けられて、生け花や切り花にはなかなか使われていません。これほどたくさんの名前が付けられているということは、人々に強烈な印象を持たれているということでしょうか。またはラッキョウ型の球根にアルカイド系のリコリンやガランタミンというかなり強い毒性を持っているからでしょうか。花後に細長い鈍頭で光沢がある葉っぱを付け、翌年3月ごろに枯れます。原産は中国で日本にはかなり古い時代に伝わったようです。
ヒガンバナは、花は咲くけれども種子ができない不稔性植物で、球根でしか増えません。ところがヒガンバナは九州から東北南部までの広範囲に咲いています。人里近くに群生しているので、移住するときや薬草として球根が人手によって各地に移植されたと言われています。
白いヒガンバナはシロバナマンジュシャゲ(シロバナヒガンバナとも)と言います。またヒガンバナ科にはスイセンやキズイセン、ナツズイセンなどがあり葉っぱいずれも細長く葉っぱも有毒です。ところでヒガンバナの学名はギリシャ神話に登場する海の女神に由来しています。(仲野良典)
「曼珠沙華茎立(くきだち)白くなりにけり この花むらも久しかりしに」(北原白秋)
「曼珠沙華一むら燃えて秋陽つよし そこすぎてゐるしづかなる道」(木下利玄)