子どもの健康・安全大丈夫? 伏見区に関西初の高架下保育園
高架下保育園は、社会福祉法人「淀福祉会」が、近くにある淀白鳥保育園の分園として運営します。同園では定員140人を上回る約180人を毎年受け入れてきたことから、新設が課題でした。しかし、必要な土地が確保できず今回の分園に至ったものです。
0~1歳児30人が入所
分園は、約200平米のワンルームで、対象は0~1歳児、定員30人です。2歳未満が入所する分園設置基準は、ほふく室と乳児室の面積だけ。園庭、調理室、医務室は不要で、同分園にこれらの設備はありません。
子どもたちが園舎で過ごす午前9時~午後7時の時間帯には、高架上を平均2.5分に1回、電車が通過し、その度にゴォーという音が響きます。建物の中央には高架を支える柱が並び、日照も十分ではありません。
しかし、市は独自に振動、日照などの測定を行わなかった上に、申請に対して▽騒音は昼間50~60デシベルで、環境省の騒音基準(昼間60デシベル以下)に合致▽保育ニーズがある▽面積、職員配置を満たしている―として認可。整備費約1200万円を助成します。
同分園について、この地域に住む妊娠中の女性(23)=は「本当に安全なんでしょうか。親としては不安です」と言います。
小児科医の尾崎望さんは「乳幼児期はできるだけ自然の音などが豊富にあることが、その後の聴覚発達には必須です。雑音レベルについて慎重に検討をすべき」と訴えます。
奥野隆一・佛教大学特任教授(保育学)は「高架下は子どもの環境としてはベストではありません。認可保育園間で大きな格差も生じる」と話しています。
規制緩和で市が後押し
京阪電鉄は本紙の取材に対して、同分園設置にあたり「自ら保育園に話を持ち掛けた」ことを明らかにしています。保育分野への参入を目指す同社と、それを後押しする京都市の姿勢が浮き彫りになっています。
2000年、国の規制緩和を契機に、首都圏では私鉄各社が保育事業に相次いで参入してきました。しかし、関西では遅れたことから、国は昨年、参入を容易にするため条件を緩和。京都市はこれに沿った設置条例を制定し、新年度からスタートさせます。
こうした“ビジネスチャンス”のもと、沿線の有効活用と子育て支援を「戦略」に掲げる同社が、「市と連携し」、同分園の事業化を図ってきたものです。(「週刊しんぶん京都民報」2015年3月1日付掲載)