メガソーラー計画に住民不安 南山城村などの山林100㌶を開発
■小学校・保育園が近接、自然破壊・土砂災害懸念
事業主体は、米国に本社を置く「ファースト・ソーラー」の日本法人などでつくる合同企業(ファースト・ソーラー・ジャパン プロジェクト6合同会社、本社・東京都)。
村内の小字4地区にまたがる山林76・6㌶(三重側約20㌶)を林地開発して太陽光パネルを設置、3万7500㌔㍗を発電し、運転開始から20年間中部電力に送電する計画。個人所有地や自治会区有林を借地する予定です。
開発業者は昨年12月、府に事業計画書を提出。府が、▽住民からの意見書公募(9日まで)▽意見書に対する開発業者側の見解公表▽南山城村村長への意見聴取―などを経て事業計画への住民合意を得たと確認した後、開発事者は府に開発許可申請を行う予定です。
〝甲子園球場26個分〟もの大規模開発を伴う計画に住民からは不安の声が噴出しています。1月に事業者が開いた住民説明会では、「水害などが起こった時に責任はどうなるのか」「森林伐採は自然環境を壊す」などの意見が相次ぎました。
同村を含む相楽・綴喜地方で死者・行方不明者あわせて300人以上の犠牲者をだした「南山城水害」(1953年)の被災体験から、洪水や土砂災害の誘発を懸念する声をはじめ、発電に伴う電磁波の影響、パネル素材の有毒物質の流出を心配する意見もあります。
また、計画に不安を持つ母親らが署名活動を始めています。予定地のすぐ南側の高台には90人の生徒が通う村立南山城小学校があるほか、保育園、保健福祉センターが立地。小学校や保育園の保護者有志らが「本郷母の会」を結成し、ホームページでの発信や事業中止を求める署名を呼びかけ、約150人分(9日現在)を集めています。
「署名活動は初めて。でも動かざるをえない」と憤るのは、会の呼びかけ人の1人の女性(30代)です。「1人でも反対してる人がいるという意志を伝えたい」。2人の子どもを持つ橋本恵生さん(35)は、「『ソーラーならいいのでは』と言う人に、『山を削るんやで』と説明すると署名してくれる人もいる。計画を知らない村の人に内容を知らせつつ、計画阻止まで頑張りたい」と話しました。
■自然破壊はゴメンです、日本共産党は建設に反対
日本共産党は、自然景観破壊、水害など災害増大のおそれがあることから、計画に反対しています。村長と知事に対し、開発を中止するよう求めています。
同党南山城村委員会は6、7の両日、メガソーラーの問題点を指摘したビラを全戸配布するなど、開発中止を訴えています。
同党はこれまで何度も現地調査や住民からの聞きとりを行ってきました。3日には、同党の倉林明子参院議員が視察。前窪義由紀府議、村議選に立候補予定のさいとう和憲氏、鈴木かほる氏とともに、建設予定地を調査しました
■住民主体でこそ発展
日本環境学会元会長・和田武さん 太陽光発電所づくりでは、その地域で暮らす住民の意向を重視して進めることが大前提です。地域住民の理解を得ずに、企業の利益本位で計画を強行させてはなりません。全国的にもこのような計画に対して各地で反対運動が起こっています。
原発に依存しない温暖化防止に貢献する太陽光発電は、住民、自治体、地域企業等が主体となってつくれば、地域を豊かに発展させることができます。全国に約800もの市民・地域共同太陽光発電所が誕生しています。自然や生活環境を破壊しないように配慮した発電所なら、地域からも歓迎されるでしょう。
■侵食で水害の危険も
国土問題研究会副理事長・奥西一夫さん 南山城地域は、花崗岩の密集地域で、崩壊や流出しやすく水害の危険性のある場所です。1953年に「南山城水害」(同村で死者54人)も起こっています。
木を伐採し、地形を変形させれば、土壌を貧弱にし、保水力を低下させます。降雨の際、雨水を受け止めるために事業者が設計する予定の調整池は、この保水力のごく一部をカバーするに過ぎません。
侵食に弱い「ブロック擁壁」構造や、沈砂池が雨水や土砂を捉えきれないなどの要因が重なれば、土砂を含んだ雨水流が道路などに流れ込み、危険です。計画は中止すべきです。
(写真上=三国越林道から見たメガソーラーの建設予定地〔手前右側と平地を挟んで左側、左奥へ続く山林一帯〕。中央の山林中腹に見えるのが南山城村小学校、写真下=メガソーラーの建設反対を訴える〔右から〕前窪府議、さいとう、鈴木両村議候補、橋本洋一村議、倉林参院議員)