■宅建業協会が宣言「違法民泊に加担しない」

 「法令順守だけじゃないんですよ」。府内の不動産業者約2600社が加盟する、京都府宅地建物取引業協会は2月、「違法な民泊には加担しない」とする宣言を発表しました。

 作成に携わった協会事務局参与の岡本哲夫さんは「周辺環境と調和した良質な民泊の提供」で、「国際観光都市『京都』の発展に寄与する」ことも誓った、ここに意味があると強調しました。

 その背景にあるのは、京都のホテル・民泊〝バブル〟でした。「大手資本の土地の買いあさりは異常です。宅建業協会の会員の多くは中小業者。大手と太刀打ちできる状況じゃない。京都の町がこのままでいいのかとの思いがある」と説明します。

 実際、国土交通省が公表(3月21日)した公示地価(1月1日現在)によると、市内中心部の商業地の地価は軒並み高騰。宿泊施設用地獲得競争の影響で、外国人観光客に人気の地点の値上がりが目立ち、東山区の八坂神社付近では約30%の上昇率となりました。

 観光と町をどう調和させるのか――。世界の歴史都市はどんな観光政策を掲げているのでしょうか。
 広原盛明・元京都府立大学学長は2月、「いいまちねっと東山」主催の講演会(3月12日付既報)で、「ヨーロッパ諸国では持続的発展策が基調になっている」と指摘しました。仏、米、伊など外国人訪問者数上位5カ国の5年間の外国人訪問者の伸び(表1参照)は、0・99~1・24倍にとどまっています。広原氏は、欧州各国の観光政策の重点は「質の高いリピーターを安定的に確保する方向にかじを切っている」と述べ、京都の目指す方向はこれだと力説しました。

■世界の流れは民泊規制強化

 現場の声も同様です。京焼・清水焼の高級食器を主に扱う老舗陶磁器店の主人は「中国人観光客の高級器の爆買いは、去年の夏に終わりましたよ。そんなバブルは続かない」と言い切ります。「京都を愛してくれるリピーターの観光客をどれだけ増やすか。それでこそ京都の町に根をはっている業者の営業や生活が守られるじゃないですか」
 
 世界の観光動向は量から質へ。民泊の規制強化も海外では進み、日本にない規制策で地元住民の住環境を守る努力をしています(表2参照)。ニューヨーク市(米)では、30日未満の短期滞在(入居者不在の場合)について、住宅の貸し出しや広告宣伝を禁止しています。
ベルリン特別市(独)では、アパート全体を民泊とすることを禁止する条例を世界で初めて施行しました。

 一方、京都市は、安倍政権の過大な外国人観光客目標数値に追随し、宿泊施設誘致に躍起となっています。前出の広原氏は指摘します。「日本と京都が世界のすう勢から取り残されることは、目に見えている」

(写真上=3階建て11室33人が宿泊できる、工事中の大規模民泊、写真中=住宅に隣接した民泊、写真下=戸建て住宅が並ぶ真ん中に計画された民泊〔すべて伏見区内〕)

(「週刊京都民報」4月2日付より)