「いのちの署名」 なぜ、どう取り組む? 署名実行委事務局・松本隆浩さんに聞く
■医療・介護連続改悪に対抗/20万人分集め政治変えよう
安倍政権のもとで、医療費削減や患者の窓口負担増、病院のベッド数削減、介護報酬削減などの医療・介護制度改悪が行われ、府内でも医療や介護が受けられない、いのちが守られない実態が広がっています。こうした深刻な状況を京都から変えようと「みんなのいのち守る署名」を呼びかけています。
来年度は、診療報酬と介護報酬の同時改定や、市町村が運営している国民健康保険の財政運営の都道府県への移管、第7期介護保険事業(支援)計画のスタートなど、社会保障が大きく改悪されようとしています。こうした中で政府と府に対し、府内各地域の医療・介護の実態を告発し、20万人分の署名を府に届け、抜本的な社会保障の改善を求めていきたいと思います。
■医療費払えず治療中断3割
医療分野では、格差と貧困が広がる中、医療を受けたくても受けられないケースが増えています。京都府保険医協会が同会員の医療機関に実施した調査では、「医療費負担を理由に患者に治療を断わられた」ケースが44・8%にのぼりました。また、「経済的理由による治療の中断があった」との回答は30・4%にのぼるなど、重い医療費負担と貧困によって医療が受けられなくなっています。さらに民医連の調査では、全国でも京都でもお金がないことによる助かる命が守れない状況になっています。
高すぎる国民健康保険料も問題です。府内の市町村国保の差し押さえ(滞納処分)は07年の1035人から4257人(12年)へと4倍も増加。全国平均(約2倍)を大きく上回り、国保料(税)が高すぎるために払えず、無保険の状況に追い込まれる人が増えています。この状況を変えるためにも年間1万円の引き下げは急務です。
介護も受けられない人が増えています。府内の特別養護老人ホームの待機者数は、09年で5610人だったのが、16年は8755人に増えています。また介護サービスの利用料の自己負担が15年に1割から2割負担(一定所得以上)へ引き上げられ、さらに3割負担への改悪が進められるなど、介護保険料は年金から天引きされるにも関わらず、使いたくても使えない制度になっています。介護保険料も2000年から02年までは2848円(府内平均基準額)だったものが、現在は5812円(同)へと倍以上に増え、大きな負担です。
医療・介護分野の人材不足も深刻です。京都医労連の試算では、患者本位の看護を提供するためには、府内だけで3万4200人もの看護職員が必要です。また、看護師・介護士不足に関する「黒書」では、「人員が少なく、業務は増える一方」「休日がとれない」「給料が安すぎる」などの現場の声が寄せられ、病院・介護施設からも人材不足に悲鳴が上がっています。
■改悪のお先棒担ぐ山田府政
このように国の社会保障制度が破壊され、府民が苦しむ中、京都府は、府民のいのちと生活を守る責任を果たせていません。山田知事は、国保の都道府県一元化をいち早く提唱し推進。また「地方税機構」を10年に全国で初めて立ち上げ、税の滞納者や国保税滞納者の差し押さえを強化するなど、国の社会保障改悪の先陣を切る役目を果たしてきました。
また府独自施策として喜ばれてきた、老人医療助成制度(65~69歳までの医療費自己負担3割負担を1割負担へ軽減)を15年から、負担割合を2割へ引き上げ、対象者を世帯全員が所得税非課税へと縮小しました。この制度も改悪前の1割に戻すことが必要です。
子どもの貧困が問題となる中で、子どもの医療費無料化の拡充や中学校給食の実施も重要です。子どものための署名も別途、準備が進んでいます。
国の社会保障連続改悪をストップさせ、京都府政を変えていくためにも、「いのちの署名」の取り組みを成功させたいと思います。
(「週刊京都民報」6月11日付より)