南丹市・小学校統廃合を考える(上)子どもの心傷ついた/先生の目行き届かない 住民組織が保護者、教諭から聞き取り調査
■児童数最大で13倍化も
調査は、園部、八木両町で統廃合から半年後の15年8月~10月と1年後の16年6月~10月に実施。全体で保護者と教諭46人が回答しました。
統廃合により児童数が最大で約13倍になるなど大規模化したことで学習環境や児童の学校生活に影響が出ています。調査結果では学習環境の変化について、
「人数が多くグラウンドで十分に遊べない。授業でなかなかあててもらえない」「教室がうるさく、落ち着きがない」などの実態が寄せられています。
児童への影響について、「多人数になり(児童一人ひとりが)目立たなくなり、どこか気のゆるんだところがある。忘れ物をしても目立たない」「下の子どもはクラスに慣れるのに精いっぱい。上の子はしずんだところがあった。前の学校のときより暗くなった。子どもの心に傷が残った」「去年(15年)は前の学校に帰りたいと言い続けた」などの状況が語られています。
また、大規模化にともない、「丁寧な指導に欠ける(言葉づかいのあらさ)」「以前の小規模校と比べ先生が子どもをあまり見てくれないと感じる」「授業が聞いている子だけで進むように感じた」という声が寄せられる一方、教諭に対し、「(児童増で)大変そうで気になる」とする意見も見られます。
また、保護者も人数が増えたためPTAの役員をすることが無くなるなど学校との関わりの希薄化や学校への通学距離が遠くなったことにともない子どもの様子や交友関係などが把握しにくいという不安が見られました。
教諭からは、放課後に児童を送るスクールバスに添乗するため、職員会議の時間が十分にとれないことや児童数の増加による仕事量の増大などが報告されています。
ネットは、大量の不登校児童の発生といった問題が生じていないもとで、学校関係者や行政、保護者が「新しい環境下でそれなりに過ごしている」という見方に陥る危険性があると指摘。しかし、調査結果はストレスや息苦しさを感じる児童の存在を示している、と強調しています。
さらに、▽親も子も目立たなくなり「居場所」空間の空疎化▽親からは子どものことを把握しづらくなったことへの不安▽先生への不満と同情▽学校が地域に無くなり、「おらが学校」「地域の学校」という意識の希薄化─などの問題が読み取れると分析しています。
■市教委認識実態とズレ
こうしたもとで、統廃合後の評価について、佐々木稔納市長は15年の市議会9月定例会で日本共産党の仲絹枝議員の質問に対し、「今のところ順調に一歩を進められたと思っています」と回答。
さらに、17年6月定例会では森榮一教育長が、西村好高議員(無所属)の質問に対し、16年度の各校による学校評価と保護者らによる学校関係者評価の結果を見ると、「(各校で)円滑な学校運営が行われ、教育活動も充実し、効果的に実施されているとの高い評価を受けており、各校の努力を高く評価している」と答えています。
本紙の取材に、児童数が13倍の学校に通うことになった児童の母親(40代、園部町)は「下の子が大規模校になじめず、学校の敷地外に飛び出したこともあった。イライラ感が募り、感情をむき出しにすることもあった。前の学校は子どもに先生の目が届き、しっかりケアしてくれていたと感じる。市教委は『子どものため』と統廃合したがそうはなっていない。前の学校で卒業させてあげたかった」と心境を語りました。
また、美山町の1年生の児童の母親(40代)は、車で5分の地元の学校が廃校となり、約1時間かかるバス通学になったことで、冬場の大雪時の交通事故への不安が増えたと語ります。また、バス通学では朝の休み時間や放課後に外で遊ぶ時間が確保できず「運動不足が心配」と健康面への懸念を語りました。
(写真=3校が1つになった園部小学校)
(「週刊京都民報」12月10日付より)