9条改憲阻止へかつてない運動へ/京都大学名誉教授・益川敏英さん
■「3000万署名」/全国市民アクション発起人に聞く
安倍政権が本気で日本を「戦争する国」に変えようとしています。改憲阻止へ私たちもかつてない署名運動を起こしましょう。
安倍政権は、秘密保護法、集団的自衛権行使容認の閣議決定、安保法制(戦争法)、共謀罪などを強行し、事実上、憲法の平和主義を壊してきました。このうえで憲法9条を変えさせてはなりません。
私は、5歳当時の名古屋空襲(1945年)の記憶が、スチール写真のようにかすかに残っています。自宅の屋根を突き破った焼夷弾がコロコロと目の前を転がりました。偶然、不発弾で、命を失わずにすみました。その後、家族にリヤカーに乗せられ、焼け野原になった名古屋の街を逃げてきました。
戦争を実感したのは中学生時代、ベトナム戦争が始まった報道を見た時です。米兵が人前で、平然と捕虜を撃ち殺している様子を見て、戦争は人の心を壊し、変えてしまうものだと痛感しました。
9条が変われば自衛隊も変えられてしまいます。これまで日本近海で不審船が出没しても日本から発砲はできないし、戦争で人を殺すこともなかった。改憲によって米国の戦争に参加し、人を殺す軍隊に変わることをおそれています。
私がテレビ番組で秘密保護法に反対と言ったら、外務省の官僚3人が私の研究室にやって来て、「これは先生が考えるような危険なものではございません」と説明したことがありました。官邸はこういうことに非常に敏感になっているようですね。
私は彼らに米国の科学者・オッペンハイマーの話をしました。オッペンハイマーは終戦後、国策の水爆製造に反対し、米政府の「赤狩り」で、機密安全保持疑惑をかけられて失脚・公職追放されました。こう話をしてお引き取り願ったのですが、このような時代を繰り返そうとしているのかもしれません。
■創意工夫と若い世代が鍵
私の青春時代はベトナム戦争、60年安保闘争の時代でした。名古屋大学の学生としてデモや集会にはしょっちゅう参加したものです。当時、名古屋市内の住宅街を署名行動で回りました。玄関先で、主婦の方から「間に合ってます」って言われると、「そうですか」と言って引き下がってしまうような学生でした。中には上手に世間話をしながらたくさん署名を集める学生もいましたね。3000万署名もそれぞれ創意工夫しながらたくさん集めましょう。
恩師の坂田昌一先生(元名古屋大教授)の持論は「勉強だけでなく社会的な問題も考えられないと一人前の科学者でない」でしたのでこれを実践してきました。
京都大学では、理学部職員組合の書記長を務め、久美浜(現京丹後市)の原発反対運動にも参加しました。平和運動での労働組合の役割は重要だと思っています。特にナショナルセンターが旗を振って大いに署名を広げてほしい。
安保法制反対の運動では、シールズの若者が奮闘していました。毎週金曜日の官邸前行動など、今の時代での工夫もされています。一方で、若い人の多くが社会運動に参加していないのが現状です。若い人たちを巻き込み、大きな運動を展開していきたいですね。