“地域内循環”が京都経済発展の鍵 岡田知弘京都大学教授が講演、シンポで議論
中小企業が99・8%を占める京都で、格差を正し、暮らしと商売を守る経済再生の道を展望しようと、京都大学大学院の岡田知弘教授を講師に招いた講演会が16日、京都市内で開かれました。
■知事選立候補表明・福山和人氏が参加
中小業者や税理士らの団体でつくる実行委員会が主催し、215人が参加しました。
岡田教授は「地域内循環こそ持続的発展の道―1%から99%の人々のための経済へ」と題して講演し、災害への対応や多国籍企業・東京都心に富が集中する経済の仕組みの解消などの点から、食やエネルギーを安定的に確保する上で必要な地域づくりのあり方、地方自治体の役割について詳述しました。
地域経済の主役は中小企業と農家であり、地域産業の維持、拡大が住民の生活を支える自治体の税源の保障になると指摘し、地域内経済循環の視点で、当地の宝に光を当てて地域づくりに取り組む自治体の具体例を紹介。循環経済の仕組み作りで京都が遅れていることを指摘し、「お金とともに再生可能エネルギーの循環によって、安全、安心に生きていける地域を京都から作ることが重要だと思う」と話しました。
実行委員会が事前に案内した、府知事選の立候補表明者2人のうち、福山和人弁護士が参加。中小企業支援策、最賃引き上げに加え、「府民みんなでアイデアを出し合い、元気になる地域循環型社会を京都からつくりたい」と語りました。
京都食肉買参事業協同組合副理事長で「三嶋亭」の三嶌太郎社長がスピーチし、協賛団体の「エキタス京都」の橋口昌治氏と「Kyoto地域経済循環ネット」の池田靖・京商連事務局長があいさつしました(要旨別掲)。
■立場超え実現目指す/Kyoto地域経済循環ネット、京商連事務局長・池田靖さん
日本経済には異常な点が2つあります。1つは、世界では1995年と比べて約2倍になっている雇用者報酬が、日本では97%に減っていること。もう1つは、世界的に中小企業は増えているのに、日本では減るのが当たり前のように思われていることです。
労働者の賃金を増やさない日本の施策が、地域経済を疲弊させる大きな原因です。その政策を転換し、仕事とお金を地域で回して豊かな地域社会を作ろうと、同ネットで7つの政策を提案しています。
心がけた点は、▽立場を超えて納得いただけるよう「中小企業憲章」(10年、閣議決定)、「小規模企業振興基本法」(14年に成立)を基礎▽住宅リフォーム助成制度などの経済効果の実例の紹介▽社会保険料の軽減策の明記─です。対話を広げ、政策を実現できる府政をめざしたいと思います。
■「循環型」転換は可能/エキタス京都・橋口昌治さん
最低賃金を1500円に引き上げ、同時に、そのための中小企業支援を求めています。同じ地域に暮らす者として、労働者も中小零細企業も一緒に、地域経済を底上げしていこうとこの講演会の協賛団体として名を連ねました。
私自身、昨年、非常勤講師から正規労働者になり、雇用の見通しと同時に、お金の使い方でも選択肢の幅が広がりました。賃金が上がり、生活の安定が、お金の巡りを良くすると実感しています。日本にはたくさんお金があり、うまく循環すれば明日の心配をせずに生活できます。循環していないもったいない状況を、みなさんと一緒に変えたいし、変えることは可能だと思います。一緒に頑張りましょう。
■国土保全にも好影響/京都食肉買参事業協同組合副理事長、「三嶋亭」代表取締役・三嶌太郎さん
牛は人間の10倍の飼料を食べますが、その穀物は米国からの輸入が多くなっています。本来、国内で循環させれば、畜産業も農業も林業にも影響を与え、日本の国土を守ることにつながります。なんとか、国内の循環型にシフトしていただきたいと願っています。
食に関わり、残留農薬の規制緩和、種子法廃止などで、企業のもうけのために不自然な食べ物が出回ることを心配しています。「御馳走(ごちそう)さま」という言葉は、昔、一里の範囲にあるおいしい土地の物を提供した料理人への感謝の言葉と言われます。グローバリズムに対するローカリズムの京都を大切にしたいと思っています。