「東山の眺めも日照も奪われる。こんなホテル計画は認められない」──。京都市内でも屈指の名勝地・東山の山麓にあり、名園で知られる無鄰菴(左京区岡崎)の西隣に5階建てホテル計画が持ち上がり、住民らは怒りの声を上げています。

「重文的景観」に選定される

 計画地一帯は、全国でも有数の良好な景観が広がる地域。計画地の北側には、琵琶湖疏水、東には南禅寺、東隣には国の名勝に指定されている無鄰菴、南の隣接地には400年の歴史のある料亭・瓢亭が並びます。計画地を含めた岡崎一帯112㌶について、市は「生きた文化財」としての「保護」を求めて、文化財保護法に基づく国の「重要文化的景観」に選定するよう国に申し出をし、15年10月に選定されました。

 ところが、選定に合せて都市計画上の規制は強化されず、ホテル建設は可能(第2種住居地域)で、建物の高さも15㍍(風致地区第5種地域、第2種高度地区)まで認められているため、ホテル計画が持ち上がりました。

 手がけるのは東京都の不動産会社、ヒューリック。京都市内でのホテル計画は、中京区の立誠小学校跡地に続く2カ所目です。3月に行われた近隣住民への説明会によると、富裕層向けの高級ホテルで、約3000平方㍍の敷地面積に高さ約15㍍、45室の建物を建設する予定です。市への開発届け出はされ、今年8月に着工し、2020年5月の開業を目指しています。

 これに対して、計画地西隣のマンションの管理組合は怒りの声を上げます。同マンションは高さを4階建てに抑え、北側の道路から見ると3階建てに見えるようにするなど、景観に配慮した構造になっています。意見書では、ホテルが制限いっぱいの建築計画で、「街並みを考慮せず、景観保全の観点からも容認しがたい」と指摘。また、同マンションは東山の眺望が〝売り〟で、東側に窓やベランダが設けられているのに、窓側の敷地境界から1・8㍍のところにホテルが建つ計画で、これでは日照は奪われてしまうと訴えています。

 管理組合理事長の東村美紀子さんは「景観にも住民の生活にも一切配慮のない、計画はとても認められません」と言います。住民の斎藤道子さんも「窓を開ければ目と鼻の先にホテルがそびえ、ほとんど光は入ってこなくなる。こんな住民無視の計画がありますか。近隣住民のみなさんに呼びかけ、計画見直しを求めていきたい」と話しています。

(写真上=住民説明会で示されたホテル完成予想模型。中心の点線で囲まれたものが計画中のホテル、右側が瓢亭、左側が住民が意見書を提出したマンション。写真下=ほとんどが更地となっているホテル計画地。奥に見えるのは東山の山並み)

(「週刊京都民報」4月15日付より)