「ちちをかえせ ははをかえせ としよりをかえせ こどもをかえせ」(「原爆詩集」序)――広島での被爆体験を詩につづった峠三吉(1917~53年)と青年たちの青春群像を描いた劇「河」が、9月8、9の両日、京都で54年ぶりに上演されます。

 昨年12月、峠三吉生誕100年と劇作家で「河」を舞台化した故・土屋清さんの没30年を記念して、広島で「河」が30年ぶりに上演され、4公演の全チケットを完売。好評を博しました。土屋さんの妻で「広島文学資料保全の会」代表の土屋時子さん(70)らが、当時、関西で上演に関わった演劇人らに呼び掛け、京都での再演が実現したもの。

 「河」は1948年から53年の広島が舞台。朝鮮戦争(1950~53年)で再び核兵器が使われる危機感が高まるとともに、レッドパージで共産主義者らが公職追放され、平和や民主主義が大きく揺らいだ時代に、反核平和の声を上げ続けた文学サークル「われらの詩の会」を結成した峠らの苦悩や揺れ動く若者たちの姿を描きます。

■詩を武器に声を上げた

 京都で上演された1964年は、京都で第10回世界原水禁大会が開かれた年。前年の同大会(広島県)で披露された「河」を、広島の劇団「月曜会」と京都の劇団が協力して、上演。京都の舞台を見た関西の大学の学生劇団が、65年、69年と公演しました。

 演出を手掛けた時子さんは三吉の妻を演じます。「48年から5年間は、広島が怒りで燃えた炎の時代。作品は古いが、テーマは色あせていない。詩を武器に声を上げた若者たちがいたことを知ってほしい」と言います。

 出演者には、峠と交流があり「ヒロシマの空」という詩を書いた女性の孫にあたる時事通信記者(25)も参加。また、西日本豪雨で被災した団員が5人おり、土砂崩れで眼前で亡くなった男性を見て「原爆被害と重なった」と言う人もいます。

 土屋さんは「京都上演が核廃絶、平和を願う運動の広がるきっかけになればうれしい」と話しています。

 8日(土)17時、9日(日)11時・15時、紫明会館(北区小山南大野町)。前売り一般2500円、大学生1500円、高校生以下1000円(当日券はプラス500円)。問い合わせ☎・FAX082・291・7615(広島文学資料保全の会)✉qqxn4he9k@cap.ocn.ne.jp、京都上演委員会☎075・762・0368(㈱三人社)✉office@3nin.jp

(「週刊京都民報」9月2日付より)